研究紀要第104号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究 第1年次」 -088/170page
工 総合的活動 ―宿泊体験学習―
・T1「みんなの中で,一人ぼっちっていう感じかな。D子さんの場含,どうかなあ。」
・D子「同じじゃあないんだけど,友だちがいないっていうか。誰も友だちじゃないなあって気がして…,信用できないんだよね。」
・T2「信用できない?」
・B男「クラスの男はみんな嫌いだ!」
(笑いが起きる。)
・T1「え一,クラスの男は嫌いかあ。」
・A男「ひきょうなんだよなあ!僕の友だちなんか,先牛の前でかっこいいこと言って。」
・T2「先生のいる時といない時の態度,違うんだ。」
・B男「そうそう,僕なんか悪者扱い。先生にも評判悪いよ,きっと。だから,話さないようにする。」
(今まで,誰にも語ることのなかった話が出る。)
…以下省略…
○ まとめ
今日の話し合いの様子から自分の今の気持ちを中心に振り返ってみることにした。
・A男「すきっとした。」
・B男「いままで心の中にもやもやしていたものが消えた感じがする。」
・C男「みんなも同じなんだなあ,という感じ。」
・D子「言えば気分はいいが,でも,言うだけでは,解決にならないよね。」
何を話してもいいんだ,という雰囲気を感じた時,むかつく,信用できない等と,周りの人に対する不満の言葉が出た。そして,この気持ちは,自分だけではなく,「みんなも同じ」という安心感を生み,次第に指導援助者のリードから離れ,自分の言葉に同調を求めるようなしぐさを入れながらその後の話が進められた。
D子の「言うだけでは解決にならない」という言葉を,次回への意欲の芽生えととらえて,グループ・カウンセリングを終了する。
宿泊体験学習は,集団活動を通した指導援助のねらいである「集団化に向けて・集団内での安定・対人関係の醸成」の総合的な活動として取り組む。
集団生活に不適応感を抱えている不登校児童生徒に対して,宿泊体験学習の場に,遊戯的活動や異年齢の交流による活動を取り入れて、心理的な不安を軽減し,円滑な対人関係づくりに必要な協調性や社会性を学び取らせ,その強化を図る。
〈指導援助の実践例〉
○ 参加者
児童生徒側は,A男(小学校6年),B男(中学校2年),C男(中学校3年),D男(中学校3年)の4人とする。
指導援助者側は,リーダー(T1),サブリーダー(T2)の2人とする。
〈実施時期及び期間〉
指導援助期間(5ヵ月間)の中期の段階に行い,実施期間は,2泊3日とする。
〈実施場所及び活動内容〉
実施場所は,海岸等の自然が十分に活用できる,「福島県海浜青年の家」(相馬市)を利用し,施設の特徴を生かしながら,スポーツ的活動,生活的活動,創作的活動等とする。
〈宿泊体験学習指導援助の実際>
指導援助の実際として,「砂の芸術」(創作的活動)と「野外炊飯」(生活的活動)を取り上げる。
<実際の例1>
〇 砂の芸術(創作的活動)
〇 ねらい
遊戯的活動を取り入れ、児童生徒が生き生きと活動できるようにする。
〇 活動