研究紀要第104号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究 第1年次」 -091/170page
○ 再登校に揺れる子どもへの対応 ○ 子どもの再登校への不安や動揺に対する理解と対応を助言する。
〈保護者によるグループ・カウンセリング実践例〉
保護者を対象にしたグループ・カウンセリングは,子どもが不登校状態にあるために保護者の心の中に共通して起きる不安や悩みの軽減,解消をめざすものである。
不登校状態にある子どもの保護者同士が,悩みや苦しい気持ちを語り合い,聴き合うことによって,自己の成長を図り,親子の好ましいかかわり方に集団内相互作用を通して気づいていく。
○ グループの構成
グループの構成については,保護者側5名程度,援助者は2名とする。
○ 時間
1回に当てる時間は,60分程度とする。
○ 援助の期間
適応指導教室における児童生徒の指導援助期間内とする。
○ 援助者の役割
援助者は,適応指導教室の担当者が当たり,保護者へのモデル的役目を果たす。基本的態度として,相手の立場で見たり,考えたりする「共感」,あるがままに相手を受け入れる「受容」,相手の話を真剣に聴く「積極的傾聴」及び必要に応じて「助言・指示」をする。
○ 取り上げる主な内容
○ 初期の段階
・ 第1回「子どもが不登校状態にある,親の不安や悩みを語り合う」
○ 中期の段階
・ 第2回「子どものよさや個性を見直し,新たな見方を語り合う」
・ 第3回「夫婦連携を図った子どもへの対応の在り方を語り合う」
○ 後期の段階
・第4回「子どもへの再登校を働きかける親の役目と子どもの支え方を語り合う」
<援助の実際>
○初期の段階
保護者には,子どもの不登校による不安があり,互いに相手の話を待つ姿勢が見られる。
第1回目には,子どもの不登校の開始時期,きっかけと思われること,現在の状態,家族の状態等を自己紹介を兼ねて全員に話してもらう。次第に,抱える悩みの共通点に気づくと互いに信頼関係ができ,「子どもを追い詰めてはいけないこと,親として,心の成長を待つ姿勢が大切なこと」や「温かな家庭の環境づくりの必要さ」への気づきがみられるようになる。
最後に,援助者から,子どもが学校へ行けるようになるまで見守る親の心の余裕が子どもの成長を促すことを助言する。保護者には,胸のつかえが取れたような安堵の表情が感じられる。
○ 中期の段階
この時期には,保護者同士の連帯感ができ,子ども,自分,家族の状況を語り合い,聴き合い,「共感,受容,傾聴」の態度を学ぷ。
お互いに伸間の話に関心を持って聴き,気持ちを感じ取り,理解しようと努めながら,仲間のあるがままの状態を受け入れるようになる。
この姿勢は子どもにも及び,好ましい親子関係をつくるきっかけともなる。
親を敬遠していた子どもが,話しかけてきたこと,父親と久しぷりに外出したこと,家族旅行で撮った写真を学級担任に届けたがっていたこと等明るい話題で盛り上がる。
援助者から,親は「子どものよさや可能性」を見つめ,プラスのメッセージを送る親の態度が子どもの自信を回復させることを助言する。
○ 後期の段階
この時期には,再登校を願う保護者の様子が感じられる。そこで,子どもが登校できる条件を援助者が紹介し,各自,我が子の登校意欲度をチェックする。登校意欲が感じられる子ども