研究紀要第104号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究 第1年次」 -092/170page
の親には,「再登校を働きかける親の役目と不安を感じる子どもの支え方」を助言する。
2.学校との連携
(ア) 連携の基本的な考え方
適応指導教室が不登校児童生徒に対する指導援助でめざすものは,不安や悩みの軽減とともに,対人関係の改善を図り,集団生活への適応力を高め,再登校を図ることである。この所期の目的を達成するためには,学校との連携が重要で,二者の役割をふまえ,好ましい連携の基本的な考え方を次のようにする。
(イ) 指導援助の段階ごとの連携の内容
学校及び適応指導教室におけるそれぞれの役割や取り組みの課題をふまえ,相互訪問等により,指導援助の段階ごとに次のような内容で連携を図る。
3.啓発活動による連携
学校 適応指導教室 初期の段階
○ 専門機関への指導援助の依頼
・不登校に至るまでの指導経過の情報提供
・生育歴の情報提供
中期の段階
○ 児童生徒との信頼関係づくり
・児童生徒の成長の様子の観察
○ 家庭との連携強化
・不登校のきっかけの除去
後期の段階
○ 児童生徒の受入れ体制づくり
・受け入れるプロジェクトチームの編成
児童生徒の状況及び対応への理解
○ 児童生徒の再登校への準備
・居場所の確保
○ 個別による指導援助
・不登校の要因の把握
・指導援助の課題の把握
・指導援助のカリキュラムの作成
○ 集団活動を通した指導援助
・児童生徒の活動状況の報告
・保護者との相談状況の報告
○ 再登校への挑戦に関する指導援助
・児童生徒の状況の報告や指導
・援助の終了期の連絡
・行動療法の導入に関する共通理解
○ 指導援助終了後の助言
不登校に対する正しい理解,適切な対応の在り方への共通理解を図り,児童生徒の再登校へ向けた連携を円滑に進めることをねらい,「啓発セミナー」を実施する。不登校を自ら体験した講師,臨床経験豊かな講師を招き,保護者及び原籍校の関係者を対象にする。
研究の成果
1 個別による指導援助の成果
ア 指導援助の各段階のカウンセリング等の成果指導援助の各段階ごとの成果をあげてみたい。
(ア) 初期の段階
初期の段階で行った受容的,支持的なカウンセリングは,指導援助者との信頼関係をつくるとともに不登校児童生徒が抱える,不安や悩みの軽減及び低下している意欲の回復を図る等,心理面の治療に効果があった。 また,発達段階が未熟な児童生徒に対して取り入れた遊戯的活動は,心理的な解放を促進し,指導援助者や仲間同志のコミュニケーションを活発にする等の効果があった。 (イ) 中期の段階 中期の段階の共感的なカウンセリングは,自己を肯定的に受け止め,自信の回復を図る効果があった。また,対人関係の改善や自己の成長にむけた課題を見つめるために,適宜行った助言,指示的な内容