研究紀要第104号 「児童生徒の学校適応への指導援助の在り方に関する研究 第1年次」 -094/170page
した「適応指導教室への通級の思い出」の作品を紹介する。
中学3年生・Y子
私は,適応指導教室に,最初,校長先生と来ました。来たばかりのころは,どういうふうにしたらいいのか,悩みました。しかし,何回か来るうちになれてきました。学校の時は,みんなに気をつかって,話すことのできない私が,明るい生活と会話ができるようになりました。
適応指導教室に来る前は,大人の人の機嫌とりばかりをしていました。そんな自分に嫌気がしていました。今まで本当の自分を隠していました。人を信じることの苦手な私だけど,適応指導教室のみんなは,信じられる人たちです。適応指導教室というこの場所が大好きです。でも,もう,みんなとお別れです。また,新しいものを見つけるように毎日の生活を送りたいと思います。人と話をするのが好きになったのは,適応指導教室の仲間と出会ったおかげです。
(2)集団内での安定
○制作活動 ○野外活動 ○見学 ○鑑賞会
制作活動では,自分が興味,関心のあるものの作品づくりに挑戦できるとともに,互いに教え合う,協力し合うといった個々の児童生徒のよさや能力が発揮できる場が確保され,一人一人に存在感や成就感を味わわせ,集団活動への参加意欲を高める効果がみられた。 野外活動や見学,鑑賞会では,野外という開放的な場所で,運動をしたり,鑑賞したり,会食したりして,楽しさを味わいながら,仲間意識を深めていく。さらに準備活動としての日程づくりやしおりづくり,交通手段を調べる等の仲間との活動,そして,それらの活動を通して,未知の人との交流は,協調性や社会性を高める等の効果があったと考えられる。
また,集団内での安定に向けた活動では,自分は何もできない人間,能力がないだめな人間という,自己否定的な考え方から抜け出し自分のよさや能力を肯定的にとらえ,自分から仲間に話し掛ける,一緒に学習に取り組む等,誘い掛けを行う積極さが増してきた。
(3)対人関係の醸成
○SST ○グループ・エンカウンター ○グループ・カウンセリング
対人関係の醸成の指導援助によって,集団の場で伸び仲びと自分の気持ちや考えを表現するとともに,相手の気持ちや考えにも配慮する態度が身についてきた。これが,仲問の行動に関心を持ち,自己理解や他者理解に結びつき,対人関係の改善に大きな効果となった。このような積極的な対人交流は,再登校への意欲を促進する効果となった。
(4)集団を通した指導援助の総合的な活動
宿泊体験学習に,遊戯的活動や異年齢の交流を取り入れ,対人関係の改善に必要な協調性や社会性を強化したことは,児童生徒の再登校を促進する効果があった。
宿泊体験学習の終了後の児童の感想文を紹介する。
小学4年生・S男
ぽくは,相馬で,てきおう指導教室のみんなと宿泊をすると聞いたとき,ふあんでどきどきした。さいしょの日は,家をはなれることが心ぱいで行けなかった。家にいるとき,だんだん行きたいという気持ちがでてきた。
お母さんに車で送ってもらい,つぎの日行った。そして,うみでおよいだり,かにをとったりした。とてもたのしかった。 ぼくは,なんだか,がっこうに行けそうな気がしてきた。みんなとハンドベースボールであそびたいと思っている。
3 家庭及び学校との連携による成果
(1) 家庭との連携