平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究2 -107/170page

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個を生かす生徒参加型の教材開発と指導法の研究
―中学校1学年理科2分野「太陽系」の指導について―

指導主事 大 室 幹 男

研究の要旨
 本研究は生徒の学習に対する情意面を高めて基礎学力の向上を図ることをねらいとし,生徒参加型となる教材開発と指導法を工夫して進めた研究であり,併せて理科教師の資質の向上も図った研究である。
 この研究単元では,情意面の目標を「身近な自然事象『天体』に興味・関心を持ち,意欲的に探究して解決しようとする態度」ととらえ,生徒一人一人が主体的に探究学習ができ,教師の支援が容易になる教材開発と指導法を工夫し,基礎学力としての天体事象の基礎的な知識・理解の習得とともに思考力を高め,天体に関する空間概念を習得させることをねらいとしたものである。
 開発した教材は生徒一人一人が主体的に活用できる金星モデル実験器と火星の視運動の観測データを1つずつ入力してシミュレートするソフト及び作図による探究法で,研究授業を通して検証してきた。
 その結果,次のようなデータや研究対象生徒と指導教師からの感想が得られ,よい成果が得られた。
1. 教材への興味・関心は「事前25%→事後64%」,基礎学力は「(研究授業では指導してない事前の学習事項)冬の昼の短い理由9%→(事後)夏の夜が短い理由64%」と成果をあげられた。
2. 生徒の感想に「覚えるにはコンピュータの方が楽だけど,理由を調べるには作図の方が分かりやすかった」などがあり,自ら探究する「学びの姿」への変容が見られた。
3. 指導教師の感想文に「モデル実験器やコンピュータを利用してみてラ生徒の興味を引くような教材が1つでもあると,その授業が生き生きとしたものになるんだなあという実感を改めて持ちました」とあり,理科教師自身の情意面や資質の変容にも役立った。

I 研究の趣旨

 本県では,「新しい学力観に立つ学力の育成」とともに「基礎学力の向上」が強く要請され,各学校では様々な取り組みがなされている。しかし,生徒の個性や関心が多様化している現在,学校五日制月2回の実施による指導時間の確保の問題,学習の個性化・個別化を図り主体的な学習活動を展開するための教材教具の不足などの問題から、どうしても教師主導の「教える,暗記させる」指導になりがちであり,授業の改善が緊急の課題となっている。
 その改善策の一つとして次のような生徒参加型の教材開発と指導法を工夫して基礎学力の向上を図りたいと考え,中学校1学年・理科「天体単元(太陽系)」で研究実践してきた。
(1) 生徒参加型とは,「黙って教師の説明を聞く」授業から,生徒が自ら意欲的に,かつ,主体的に授業に参加し,作業的に探究する学習活動のことである。
(2) そのために,生徒一人一人の興味・関心や意欲を高め,かつ,学習の能率化・効率化と教師が支援し易くする教材教具を開発し,生徒の主体的な探究学習や考察が十分できるようにする。
(3) また,教師の支援を重視した指導過程を工夫し,開発した教材を活用する体験を通してより確かな基礎学力を生徒に定着させる。
同時に,「学び方」も習得させ,後の学習に十分活用できるようにする。


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