平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究2 -116/170page

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どろいたりという働きかけをしました。スケールとしての紙円筒の輪に気付かない生徒には図と照らし合わせながら一人一人に指導しました。
○ 指導は使用法だけにし,結果は極力自分で考えさせた。また,T・Tをお願いして作図とコンピュータを自由に選択させ,重複も認めたが,1つはしっかりやらせました。
 工 生徒の基礎学力の高まり
○ 金星の満ち欠けがこれほど押さえられたのは初めてです。基礎学力は高まったと考えられます。
○ 火星の見かけの動きの理由については,多くの生徒が把握できているように思いますし,空間概念についても十分理解したと思います。

IV 研究の成果と課題

1 研究の成果
(1) アンケートによる意欲の向上
 論理的な思考の必要な空問概念の理解を図るこの単元において,段々と生徒の意欲が低下しがちであるのに,本研究ではわずかであったが向上させることができた。(分かった72%→81%)
(2) 開発した教材に関する生徒の意識
 開発した教材は約90%の生徒が役立ったとし,意欲的に活用していたので効果があったと思われる。
(3) 思考力に関する生徒の意識変容
 宇宙間での惑星の動きを空問的に考察し,想像できたとする生徒が70%以上となり,かつ,資料V-5の明星の見え方や火星の視運動も生徒の70%は理解していた。このことから思考力の向上は図られた。
(4) 学習後の基礎学力の変容
 研究授業以前に学習した四季の理解等を,指導していない研究授業を通して高めることができ,確かな基礎学力(思考力や学び方も含む)を高めることができた。(冬の昼の長さ9%→夏の夜64%)
(5) 研究授業後の生徒の感想
 生徒の感想文に「コンピュータは楽しそうだけれど,作図の方が『自分でやった』という感じがする」とあり,生徒が興味・関心を引きやすいコンピュータでなく,自ら遣求する作図法で解決するという価値判断力と行動力が生じてきたことが分かり,「学び方」の学習を含む基礎学力が高められた。
(6) 指導教師の感想から
 「モデル実験器やコンピュータを利用してみて,生徒の興味を引くような教材が1つでもあるとその授業が生き生きとしたものになるんだなあという実感を改めて持ちました」と言うことから,開発教材の研究授業は理科教師に対する情意面の高揚と資質の向上を図ることができたと考える。
 以上のことから開発した金星モデル実験器,火星の視運動を調べるコンピュータソフトや作図法は生徒の情意面を高め,主体的な探究学習を支援し,基礎学力を高めることができたといえる。また理科教師の情意面や資質の向上にも役立つと考えられる。

 2 今後の課題
(1) 生徒の情意面の評価は自己意識によるので評定はまちまちになる。また,教師と生徒では評定が違うと思われるので評定の研究も進めてみたい。
(2) 一部に開発した教材が「理解できない,おもしろくない」と言う生徒がいる。もう少し別な指導や支援が必要だったのかと思われ,今後も研究を継続してみたい。

〈おわりに〉

 本研究は科学技術教育部の研究主題「情意面を重視した授業のあり方に関する実践的研究」を受けて進めた研究である。どの教材も,誰でもどこでも活用できる非常に簡単なつくりであったので効果に不安を感じていたが,好評を得ることができた。
 特に,情報教育が重視されているにも拘らずシミュレーションソフトに頼り,高価でソフトが整備できないと嘆いている現状の中で,自作の火星の視運動を調べるコンピュータソフトが大部分の生徒に抵抗なく受け入れられ,興味深く活用できたのは研究の成果である。
 最後に,本研究を進めるに当たりご協力をいただいた二本松市立二本松一中の校長先生,片倉,山下,小松先生に厚くお礼を申し上げます。


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