平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究3 -118/170page
表1 電気分解の教科書による比較
A教科書 B教科書 C教科書 メインの実験 塩化銅 塩酸 塩化銅 サブの実験 塩化鉄
塩酸塩化銅
塩化鉄塩化鉄
塩酸イオンのできる
仕組み× ○ ○ 電気分解と
イオンモデル塩酸 塩酸 塩酸 電子のモデル × ○ ○
※ここで,「○は取り上げている,×は取り上げていない」を表している。
表1より,本県のほとんどの中学校で使用しているA教科書では,単元「化学変化とイオン」について,イオンのできる仕組み及び電子のモデルは取り上げられていない。したがって,教科書をもとに授業を進めていった場合,次のような問題点につき当たる。
(1) 塩化銅の電気分解の実験を行い,生徒たちの発想や思考力を生かした授業を展開しようとした場合,2価のイオンが扱えないため中途半端なモデルとなってしまう。
(2) 塩酸の電気分解の実験は,教科書の中では演示実験程度の扱いであるが,電気分解のイオンのモデル図は教科書に掲載されており,授業での取り上げ方に工夫を要する。
以上の(1)(2)から,実験結果をもとにして自然現象をイオンのモデルによって説明する探究の過程を重視した授業を展開することが困難となり,つい教え込みの授業になってしまう傾向が見られる。
このような現状を踏まえ,イオンのモデル形成を重視した授業改善の視点を明らかにし,解決策の1つとして学習ソフトウエアの開発と活用について研究を進めることにした。
II 研究の内容
○ イオンのモデル形成を重視した授業改善の視点を明らかにし,具体的に学習過程を作成する。
(授業改善)
○ イオンのモデル形成を支援する学習ソフトウェアを開発し,その活用方法を明らかにする。
(ソフト開発,情報処理技術考(SE)の活用)
III 研究の実際と考察
1 イオンの学習の授業改善
(1) 単元について
【ねらい】
1.塩化銅水溶液や塩酸に電流を流す実験を通し,塩化銅や塩化水素が電気分解されることを理解する。
2.水溶液の電気分解をイオンの概念を導入することにより,化学変化を微視的な見方・考え方で説明することができる。
【問題点】
1.目に見えない現象をモデルで説明するという抽象的な学習内容や活動は,生徒にとって難解であり取り組みは消極的である。また,抽象度が高いことから教師主導型の授業になりがちで,生徒の発想を生かし思考にそった授業展開が少ない。
2.教科書における学習内容の構成上,時間を十分にかけて行われる「塩化銅水溶液の電気分解の実験」について,学習指導要領の学習内容の制限などから,十分に考察することができず,生徒の学習意欲を低迷させてしまうことが多い。
(2) 授業改善のための視点
1.学習課題を明確にし,予想される生徒の反応(モデル・考え)をとらえる。 【視点1】
2.友達のモデルや考えを知り,自分の考えを深め,さらに正しいモデル修正への意欲が高まるような場面を設定する。 【視点2】
3.モデルの修正過程を明確にし,モデルの修正が生徒の思考にそって進められるようにする。 【視点3】
4.コンピュータの活用を学習過程に適切に位置づけ,生徒の学習活動を支援する学習環境を整備す