平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究3 -122/170page
えを作り上げる学習活動を行い,教師はそのような学習環境(教材・機器等)を整備し,生徒の学習活動を支援することにより成り立つ。
教師が,新しい学力観に支えられた授業を展開するにあたり,このような「知的構成主義」という学習理論を背景にし,「生徒の活動」と「教師の役割」を十分に配慮した授業を設計することが今後いっそう重要視されると考えられる。
このような生徒主体の授業の具体的な授業展開として,問題解決型学習が考えられる。この問題解決型学習では,特に「1,問題の把握」「2,問題を解決する方法を複数持てる」「3,結果を判断できる(ここでは,間違いに気づく力も大切にしたい)」「4,応用できる」などの過程を重視した学習が展開されることが望まれる。
つまり,「知的構成主義」という李習理論をふまえ,問題解決型学習による生徒主体の授業が展開されることによって,自ら学ぶ意欲と生きてはたらく真の学力が育成されるものと考える。
(2) ツールとしてのコンピュータ活用
これらの学習過程において,生徒の思考や活動を支援するツールとして授業に適切にコンピュータが活用されれば,生徒にとっては「自分の考えを構成しやすい学習環境」がいっそう整備されることとなり,コンピュータの活用が授業改善につながると考える。
さらに,コンピュータを有効に活用するためには,「何が課題なのか,どうすれば解決できるのか」など,日頃から自分で考える訓練をいっそう重視した授業の展開が望まれ,具体的に「問題解決型学習のどの場面でコンピュータを活用するか」という授業改善の視点を持つことが大切である。本研究では,イオンのモデル形成過程(課題追究の場面)での活用を考え研究に取り組んだ。
(3) 問題解決型ソフトウェアとシミュレーション
問題解決型学習では,自力では解決のための手段を見い出すことができない場面が,生徒の思考や活動の各過程に存在することが考えられる。このような場合に,生徒があらかじめ用意されている学習ソフトウェアの中の多くの支援メニューの中から,自分で判断し必要とするものを選択し,それを用いて自力で解決していく活動が大切になる。
そこで,「イオンのモデル」を形成していく過程において生徒の発想と思考の連続性を重視し,自分の力でモデルを作り上げる学習においては,このような活動を支援する問題解決型の学習ソフトウェアの開発と活用が必要である。
特に,イオンのモデルのイメージを想起させ,理解を深めさせるためには,シミュレーション(アニメーション)による学習ソフトウェアの効果が期待できる。
生徒が実験結果を説明するために目に見えない原子・分子の世界のモデルを考え,説明してしていく過程の中で,科学的な思考力を養い,科学的な見方・考え方を身につけさせていく時,シミュレーションは,原子・分子の世界のイメージを膨らませることができ,モデル形成にその効果を大いに期待することができる。
3 ソフトウェアの開発
(1) 問題解決型学習ソフトウェアの開発
1.開発のねらい
塩化銅水溶液の電気分解の実験の結果から,イオンのモデルを形成する学習活動を支援する。
2.FCAIシステムの活用
FCAIシステムは,Frame Type CAI Systemの略で,堀口秀嗣氏(国立教育研究所)を中心に開発された教材作成支援システムである。
今回は,このFCAIシステムにあるいくつかのプログラム群のうちFE(FrameEditor)のプログラムを用いて,1フレーム毎に画面を作成し,問題解決型学習ソフトウェアを開発した。
3.コースアウトラインの構成
[水溶液を流れる電流 イオンモデル]
[1 塩化銅水溶液のモデル]
↓