平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究3 -126/170page

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を踏まえた開発と活用の在り方についてまとめた。
・「水溶液を流れる電流イオンモデル」
(塩化銅の電気分解が中心)
・「電気分解(塩酸)シミュレーション」
2.その他の活用法
 1つのソフトウェアの活用方法は1つとは限らない。今回開発した「電気分解(塩酸)シミュレーション」は,モデル1〜モデル4まで生徒の実態や学習の進め方に応じてシミュレーションが選択できるようになっている。自分のモデルとソフトウェアのシミュレーションとを比較することから,新たな課題の発見や課題の追究を行う学習過程に発展させることもできると考える。
 このように,1つのソフトウェアについて,いくつかの活用方法を考えるという視点も大切にしたい。

2 今後の課題
(1)「イオンのモデルを修正する過程」の検討

 本研究においては,イオンのモデルの修正過程を学習内容の優先性や難易度から「イオン概念の導入」から行う学習過程を考えた。本来,自然現象の順序性からは「ファラデー説・アレニウス説の検討」から進めることも考えられる。
また,「電子の流れに注目させ,電子の授受の相手として塩化銅に目を向けさせる」という廣田隆行氏の実践報告もある。
 どのようなイオンのモデルの修正過程を通して,イオンの概念をつかませることが,生徒の思考にそったよりよい学習過程になるかについて,今後さらに研究を重ねていく必要がある。
(2) 学習環境としてのコンピュータの活用
 1967年ごろ米国のマサチューセッツエ科大学(MIT)のシーモア・パパート教授らは,知的構成主義の立場に立つ学習環境を実現する道具としてロゴ言語を開発した。
 さらに,このロゴ言語の日本の第一人者である土橋永一氏はその著書で『ロゴのつくる学習環境(マイクロワールド)と「砂場」の学習構造』の類似性について『「マイクロワールド」学習は,抽象的な世界の「砂場」のようなもの』と述べている。
 本研究におけるコンピュータの活用方法は,生徒たちにとって「砂場」とまではいっていない。具体的に「モデルを形成していく場」は,紙と鉛筆を使っての「ワークシート」上である。
 今後,「イオンのモデル形成」等における学習活動におけるコンピュータが「砂場」的な学習環境となるためは,コンピュータの画面上で自由にモデルが作成でき,思うように動かせるシミュレーション支援ソフトウェアの開発が望まれる。
 次の開発ソフトウェアを実際に授業で活用してみたい先生は教育センターまでご連絡ください。
『水溶液を流れる電流イオンモデル』
『電気分解(塩酸)シミュレーション』
〈参考文献・図書〉
1)文部省『中学校指導書理科編』学校図書,1989
2)山際隆・江田稔『改訂中学校教育課程講座理科』ぎょうせい,1989(註1)
3)芦葉浪久『優れた授業を支える教材教具』ぎょうせい,1994,pp32-35
4)小野寺明男『現代学習指導論』金港堂,1985
5)教育技術研究会『教育の方法と技術』ぎょうせい,1994
6)左巻健男『新中学校理科の指導・3年』民衆社,1992
7)芦葉浪久『コンピュータ教育のススメ』アスキー出版局,1991
8)赤堀侃司「タイプ別に見るアニメ&シミュレーションソフトの世界」学習研究社『NEW教育とマイコン』,Jul.1993,pp34-38
9)廣田隆行「発展的追究活動を考慮したイオンの学習」ニチブン『申学校理科教育実践講座3』,1995,pp98-103
10)土橋永一『ロゴと子どもと先生と』ロゴジャパン,1990,pp36-37
11)「中学校「理科」における学習ソフトの開発」広島市教育センター『研究報告書Nα21』,1990,pp45-59
12)北之間博「子どもの考えを重視した理科指導一中学校3年「イオン」一」堺市立科学教育研究所『科研紀要第6号』,1987,pp77-82


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