平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究4 -127/170page
自己表現活動を生かし,子どものよりよい人問関係を育てるための指導援助の在り方
一生活科の学習(第2学年)を通して一長期研究員 佐 藤 米 子
研究の要旨
本研究は,子どものよりよい人問関係を育てるために,子どもの自己表現活動をどのように指導援助すれば,子どもは自己存在感や成就感を味わうことができ,子ども相互の理解が深まるかを生活科の指導(授業)を通して探ったものである。
生活科の活動過程の中に,自分の思いや考えを素直に表す,自分の思いや考えを深める,友だちとのかかわりをもつ,友だちとのかかわりを深めるという4つの表現活動をひとまとまりの連続する表現活動として意図的に位置付け,それぞれの活動場面において生徒指導・教育相談の機能を生かした指導援助を継続的に進めた結果,次のようなことが明らかになった。
1.活動過程の中に自已表現活動の機会や場を位置付けた意図的な指導援助は,子どもが主体的に自己表現活動に取り組み,考えたり感じたりしたことをその子どもなりに表現するのに有効である。
2.子ども一人一人の自己表現活動の状況に即して,生徒指導・教育相談の機能を生かした具体的な指導援助の手だてを工夫することは,子ども一人一人のよさを認め,自己存在感や成就感を味わわせるのに効果がある。
3.友だちとのかかわりをもち,深める活動は,交友関係を広げたり深めたりする場となり,子ども相互の理解を深めるのに有効である。
I 研究の趣旨
今日,子どもたちのいじめ・不登校・集団不適応などの問題行動が大きな社会問題となっており,その解決が緊急の課題となっている。このような状況の中で,教師は子どもの問題行動の改善を図るための指導援助に全力を挙げて取り組んでいる。昨年度の研究で,このような問題行動の背景にある要因を調査研究したところ,主な要因として,本人自身の内気で消極的な性格や自己評価の低さ,対人関係を築くことが苦手なこと,表現力の乏しさ,家庭での偏った養育態度などが明らかになった。中でも,対人関係と表現力の乏しさについては,日頃,学校教育活動の中で積極的に指導援助していくことが望まれる。
子どもは本来,「自分のことを分かってほしい」という願いをもっている。したがって,自分の思いや考えを様々な方法で素直に表現したことが相手に受け止められ認めてもらえることによって,自己表現する意欲が高まっていくものである。日々の学習指導でも子どもが安心して自己表現できる場を設定し,表現することに慣れさせ,周囲の友だちとのかかわりをもたせることが大切である。
生活科は,具体的な活動や体験を通して,子どもに体全体で学ぷことの楽しさや問題解決の成就感を体得させると共に,そこで学習したことを次の学習や自分自身の生活に生かそうとする意欲や態度を育てることを目指している。したがって,生活科では子ども一人一人に即して,その子どもの活動を励ましたり,助長したりすることが大切にされるので,子ども一人一人が自分の発想やよさを生かし,自分らしさを存分に表現していくことが重視される。
そこで,本年度は,よりよい人間関係づくりに焦点をあて,子どもの自己表現活動をどのように指導