平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究4 -132/170page
4指導援助の実際
このような考えを基にして,8月から12月までの5ヵ月間,自己表現活動の機会や場を設定し,生徒指導・教育相談の機能を生かした指導援助を計画的・継続的に実施した。
次の活動過程は,実践の一部を示したものである。
[資料一6]『のりものにのってみたいな』の活動過程(本時1・2/10)
「生徒指導・教育相談のかかわりを中心に」
自己表現活動 主な活動 ○教師の指導援助(◎個に応じた指導援助)□評価の観点 第1段階 自分の思いや考えを素直に表す 1 バスに乗った経験をふりかえる。 ○バスに乗って探検に行くことを再確認する。
○誰とどこに行ったかなどを発表させることにより、バ又乗車への関心をもたせる。《認める》
○利用者の乗降の様子,運行のための設備,運転手の仕事の様子などを発表させてバスヘのイメージをふくらませ,バスごっこへの意欲付けを図る。《認める》《促す》
◎何事にも興昧を示さないK男には,一人でバスに乗った時のことを思い出させる。《促す》第2段階 自分の思いや考えを深める 2 バスごっこのための相談をする。
・どんなバスにするか
・だれが,何を作るか
3 バスを作る。○グループでどんなバスを作っても良いことにし,自由に考えさせる。《見守る》
◎自分の考えがもてない子どもには,どんな物があると素敵なバスになるか,一緒に考える。《助ける》
○バスの完成予想図を作ってからバスを作りたい場合と,すぐにバス作りに入りたい場合があると思われるので,子どもの考えによって弾力的に扱う。《見守る》
○材料はできるだけ多く準備しておき,子どもの願いに応えられるようにする。第3段階 友だちとのかかわりをもつ ◎ 一人での作業が難しい時は,協力し合って作業させリ,良い方法を一緒に考えたりして援助する。《促す》《助ける》
○試行錯誤を繰り返しながら作っている姿を認め,励ます。《認める》
○一人一人に声をかけ,作品のよさやがんばりをほめ,それをグループの友だちにも紹介する。《称賛する》
○教師も一緒に活動し,バス作りの楽しさや難しさを共有する。《共感する》
◎製作活動に自信のないY男には,作品の良いところやがんばりなど,具体的に指示してほめ,自信をもたせるようにする。《認める》《称賛する》
◎友だちとの交流がうまくもてないE子には,友だちと一緒に作業をする機会を設けたり,友だちからの言葉かけを促したりして楽しく活動できるようにするむ《助ける》《促す》第4段階 友だちとのかかわりを深める 4 作ったバスを紹介する。
(気に入ったところ,工夫したところなど)
5 次時の活動の見通しをもち、後片付けをする。○ お互いの作品を見せ含って,自分との違いに気づかせ,一人一人の作品のよさや作る時のがんばりをみんなで認め,ほめる。《認める》《祢賛する》
○その子どもなりの満足感を大切にし,作り上げた喜びを共有する。《共感する》
◎声が小さい,言葉が足りないなどの子どもには,特に配慮する。《見守る》《助ける》
○自分たちのバスで遊びたいという意欲を大切にし、次時はバスを完成させるという見通しをもたせる。
口楽しくバスごっこをしようとする意欲をもつことができたか。 (活動の表情や観察・グループの発表)
「のりものにのってみたいな」の実践から
(1) 本時のねらい
○ 楽しくバスごっこをしようとする意欲をもつことができる。
○ 自分の作りたいものを思う存分に作ることができる。
(2) 授業と本研究との関連
本時は,単元の導入であるので,単元全体の意欲づけを図る重要な時間である。そこで,本時ではまず,子どもの自由な発想を生かし、 思いや考えを素直に表現 させるためにグループごとにバスごっこについて話し含わせる。この活動の中で, 子ども一人一人の バスごっこに対する 思いや考えを受け止め、子どもの気持ちに寄り添った指導援助 をしながら思いや考えを深めさせていきたい。
また,グループの活動では一緒に作業するなど, 子ども相互のかかわり合いを大切 にし、 活動を知らせ合ったり、ちがいの中によさを見つけて気づかせたりして、友だちとのかかわりを深めていき 、本時のねらいに迫りたい。
(3) 実践の様子
1.第1段階『自分の思いや考えを素直に表す』
○ バスに乗った時の経験を認める 過程では、「降りるとき,ボタンおすんだ。」「お金は,番号を見ると分かるよ。」など,ほとんどの子どもが自分がバスに乗った時の様子を発表したりつぶやいたりして,積極的に自分の思いを表現していた。何事にも興味を示さないK男に 「K君は一人で乗ったことがあるんだよね。」とたずねたら 、「整理券をとる機械もあったよ。」という答えが返ってきた。