平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究5 -146/170page
この質問では,「大きく変わった」「少し変わった」を含めると,全体の70%の生徒が今までの創作のイメージが変わったと答えている。
その理由としては「楽しかったから」が最も多く,他に「基本を学べば結構簡単に一つの音楽を作れることを知ったので」「メロディーを考えたりという難しいことだというイメージが,そうでないと思ったから」「今までは一人で創作していたからおもしろくなかったけど,みんなで考えることでいい音楽がつくれたと思うから」などが挙げられた。
反対に,全体の30%が「あまり変わらない」「全く変わらない」と答えており,理由として,「何となく」が最も多く見られ,他に「創作が難しいのには変わりがないから」などが挙げられた。
全体としては,事前調査での「創作」(音楽づくり)に対する消極的な見方を変えることができたように感じる。
IV 研究の成果と今後の課題
1 研究の成呆
即興的表現による「アジアの民族音楽」へのアプローチとして,フィリピンの民族楽器「トガトン」を使った「創作」(音楽づくり)をしていく指導の在り方を探ってきた。
その授業実践の成果として,前項の「今回の授業で分かったことは?」の生徒の記述からその主なものを読み取ることができる。
一つは「民族音楽」の諸原理に基づいた体験的活動の有効性であり,もう一つはその原理に基づいた「即興的表現」の楽しさを,グループアンサンブルの活動をとおして共有できた点である。
さらに,事後のアンケート調査で「楽しかった」と答えた生徒が多く見られたことは,「アジアの民族音楽」を理解する方法として,そして生徒一人一人の個性や発想を表現する手法として「創作」(音楽づくり)が有効であったように思われる。
2 今後の課題
本研究の成果を踏まえ,今後は以下の視点から研究を進めたいと考える。
(1)「アジアの民族音楽」の視点から
今回は,東南アジアの特にフィリピンの民族楽器「トガトン」を使って実践したが,アジアの他の地域の音楽文化の特微を研究し,表現学習として教材化を図ること。
(2)「創作」(音楽づくり)の視点から
「アジアの民族音楽」の音階の特徴を捉え,旋律として「創作」(音楽づくり)に生かす指導の在り方の研究。
最後に,本研究にご協力いただいた,福島県立福島東高等学校の校長先生,音楽担当教諭の松本光治先生に厚くお礼申し上げます。
《引用文献》
1) 文部省:高等学校学習指導要領解説 音楽編(東洋館出版社 1990) P95
2) 文部省:高等学校芸術科音楽指導資料「指導計画の作成と学習指導の工夫」 (教育芸術社1992) P59
3) 坪能由紀子『世界め音楽に親しもう』12 教育音楽中高版連載(音楽之友社21991 12月号) P90
4) 坪能由紀子『音楽づくりのアイディア』(音楽之友社1995) P53
《参考文献》
○ トレヴァー・ウィシャート著坪能由紀子・若尾裕共訳
『音あそびするものよっといで!』(音楽之友社 1987)
○ 藤井知昭『民族音楽概論』(東京書籍 1992)