平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究6 -147/170page

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小学校家庭科における調理実験を取り入れた指導法

長期研究員 鈴 木 紀 美 子

 研究の要旨
 本研究は小学校食物領域において,調理実験を導入することにより,児童が食品の栄養的特性や調理性を生かして調理実習に取つ組むことができるようにするための指導法を,授業実践を通して追究することにし,2か年にわたって行ったものである。
 ここでは,調理実験の方法と題材における位置付けについて,食品の栄養的特性に関する実験と食品の調理性に関する実験に分けて授業を構想した。これをもとに2つの題材を設定し授業実践を行った結果,次のようなことが明らかになった。
 1.調理実験は食品の栄養的特性や調理性を視覚的にとらえさせることができるので,栄養や調理法への興味・関心を高めるのに有効な学習方法である。また,調理実習の前に位置付けることにより,児童は実験でとらえた内容を生かして実習に取り組むことができる。
 2.調理実験で調理法についての課題を解決する場合,実験方法を児童に選択させると一人一人が課題意識を持ち,調理実験を通して主体的に課題解決に取り組むことができる。
 3.調理実験を通してとらえた食品の栄養的特性や調理性を生かして調理を創意工夫させることにより調理への成就感や満足感を味わわせることができる。また,成就感や満足感が大きいほど家庭での実践意欲が高まる。

I 研究の趣旨

 実践的・体験的に学ぷことを重視する家庭科では,基礎的な知識と技能を身に付けていくために実験・実習は欠かせないものである。特に,実験については,生活を科学的に追究する方法として,また,問題解決能力を育てるためにも,今後ますます重視していかなければならないと考える。
 食物領域においては,調理実験を位置付けることにより「なぜ,その順序で調理するのか」「なぜ,その火加減が適切なのか」などという調理の原理・原則を学んでいくことができる。それにより,児童に生活を科学的な視点から考える目を育てることが可能になる。また,調理実験によって,食品の栄養的特性や調理性を生かした調理法を児童が自ら獲得していくことができれば,それを生かした調理実習を行うことができる。
 しかし,ややもすると調理実習は作って食べる活動に終わりがちで,調理実習の中に調理実験が位置付けられている授業はあまり見られない。それは,多くの先生方が調理実験は準備が大変だ,実験方法が難しいと考えているからではないかと思われる。一方,調理実験を取り入れたものの,「実験だけで終わってしまい,実験でとらえた食品の栄養的特性や調理性を調理実習に生かせなかった一「実験結果がはっきりでないために,児童がかえって混乱してしまった」という反省点もあげられる。
 そこで,操作が複雑でなく,結果がはっきり出てくるような調理実験を取り入れ,食品の栄養的特性や調理性をとらえさせ,それらを生かして調理実習に取り組めるような指導法を追究していきたいと考え,本主題を設定した。
 本研究では,調理の学習において,児童が食品の栄養的特性や調理性を考えて調理実習に取り組める


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