平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究6 -148/170page
ようにするためには,どのような調理実験を行い,実験と実習を題材の中にどのように位置付ければよいかなど,指導法について授業実践を通して明らかにしていくことをねらいとしている。
II 研究の内容・方法
〈平成6年度〉
(1) 先行研究,文献などの調査・研究により,調理実験の意義や在り方を探る。
(2) 食品の栄養的特性をとらえる調理実験について教材研究を行う。
(3) 検証授業「緑黄色野莱の調理」を実施する。
(4) 検証授業の分析・考察を行う。
〈平成7年度〉
(1) 食品の調理性をとらえる調理実験について教材研究を行う。
(2) 第1年次の反省をもとに,検証授業「調理の工夫」を実施する。
(3) 検証授業の分析・考察を行う。
(4) 研究のまとめを行う。
III 研究の実際と考察
1 調理実験に対する本研究での考え方
(1) 調理実験の学習としての意義
調理実験とは,「食品の調理特性や調理方法の要点について,実験試料及び実験方法を意識的に条件設定して,その結果を考察させる学習方法」である。
これまでの調理実習の授業では,教師が調理法の説明や示範を行い,児童はそれと同じ方法で一斉に調理実習に取り組むという学習形態が多かった。このように教師が一方的に教え込む授業では,児童は調理法についての疑問'を持たないし,調理の原理・原則についても,自ら学び取っていくということが少なかった。このため,調理の学習において,思考力,判断力などの育成を図ることが難しかった。
しかし,調理実験を導入することにより,調理の原理・原則を考えたり,実験結果を調理実習に生かして取り組んだりすることで,思考力,判断力などを育成していくことができると考える。また,調理実験という実践的・体験的な活動を通して学ぶことで,調理法を児童が自らとらえ,基礎・基本の定渚が図れると.ともに,実践力の育成にも結び付いていくと考える。さらには,調理の原理・原則をとらえることができれば,他の食品の調理の際にも応用することができるという効果も期待できる。
(2) 調理実験を導入する際の留意点
調理実験は,調理に関する内容を確実に身に付けさせるために行うものであり,実験する活動自体が目標ではない。このことが,理論を証明したり,発見したりするための理科の実験との違いであるといわれている。そのため,調理実習の事前に調理実験を取り入れる場合が多く,実験結果を調理実習に生かすことが重要になってくる。
そのためにも,次のようなことに留意する必要がある。
○ 何のために調理実験を行うのか,目標を明確にして学習過程の中に位置付ける。目標が明確になっていないと,調理実験だけに終わってしまい,実験結果を調理実習に生かすことができなくなってしまう。
○ 教師は,予備実験を十分に行う。教科書や資料などと同様に行っても異なった結果が出てくる場合もある。また,予備実験の結果から,簡単にできる実験か,結果がはっきり出てくる実験かを検討するとともに,児童の実態を考慮し,児童の興味・関心を高めることのできるものを選ぷ。
○ 教師による演示実験が適当か,児童自身が実験した方がよいのかを十分検討する。また児童が実験を行う場合には,実験方法を教師が提示するのか,児童自身が考えるのかについて,実験内容や児童の発達段階を考慮して決めることが大切である。