平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究6 -151/170page
察すると図3のようになる。
沸騰直後のものは生の部分が残っているが,時間の経過とともに生の部分が少なくなっていく。また半分に切ったものをしばらく放置しておくと,生の部分の周囲に褐変現象が起きるが,加熱され生の部分がなくなると褐変現象は起きなくなる。褐変現象は,じゃがいもに含まれるチロキシナーゼという酸化酵素がチロシンを酸化させ,褐色のメラニン色素を生じさせるために起きる現象である。しかし,加熱により酸化作用をおさえることができるため,加熱された部分では褐変現象は起きない。加熱された部分は,食べられるほど柔らかくなっているということではないので,食べるためにはさらに加熱が必要である。
2 授業の実践
授業1 「緑黄色野菜の調理」
(食品の栄養的特性に関する調理実験)
(1) 題材の目標
1.野菜の食べ方に関心を持ち,健康を保つために野菜を積極的にとろうとする。
2.野菜に含まれる栄養素の調理上の特徴をつかみ,野菜の種類に応じて切り方やいためる順序を工夫することができるようにする。
3.野莱の栄養や特性を生かし,見た目や歯ざわりのよい油いためを作ることができるようにする。
4.緑黄色野菜の種類と含まれる主な栄養素の調理上の特徴が分かるとともに,栄養を生かした調理法をとらえることができるようにする。
(2) 授業の計画 (総時数 6時間)
(3) 授業の実際
時 ねらい 学習活動・内容 教師のはたらきかけ 2 ○緑黄色野菜の種類と主な栄養素が分かる。
○カロチンとビタミンCの加熱調理上の特徴が分かり、油いためのよさをとらえることができる。
1.緑黄色野菜の種類と栄養素について調べる
2.力ロチンとビタミンCの加熱調理上の特徴と油いためのよさについて調ぺる。
○児童が1週間に食べた野菜を緑黄色野菜とその他の野菜に分けて板書することで,緑黄色野菜の種類をとらえることかできるようにする。栄養は、資料を調べることでとらえることができるようにする。
○力ロチンを抽出したものを提示することで,カロチンヘの興味・関心を高める。その後,児童によるカロチンの油溶性実験や資料からカロチンとビタミンCの栄養的特性と油いためのよさをとらえることができるようにする。2 ○油いための調理試行活動を通して,栄養を生かした調理法をとらえることができる。
○栄養を生かし,見た目と歯ざわリのよいほうれんそうとにんじんの油いためを作ることができる。
1.班の計画で調理、試行活動を行い,栄養を生かした調理法について話し合う。
2.調理試行活動で話し合ったことをもとに,栄養を生かした油いためを作る。
○火の通り方の異なるほうれんそうとにんじんを使うことにより,野菜の切り方,いためる順序、加熱の仕方について,工夫できるようにする。
○加熱時間と栄養素の減り方方の資料を提示することで,短時間加熱の必要性をとらえることができるようにする。
そうすることにより,火の通りにくい野菜の切り方やいためる順序についての解決の見通しを持って,調理に取り組めるようにする。2 ○好きな野菜を使って,栄養を生かした油いためを作ることができる。 1.好きな野菜の油いための調理計画を立てて、油いためを作る。 ○一人実習とし各自が調理をを経験できるようにすることで,成就感を味わうことができるようにするとともに技能の定着を図る。
1.第1・2時(緑黄色野菜の種類と栄養)
緑黄色野菜の種類と栄養の学習後,ほうれんそうからカロチンを抽出したものを観察させた。緑色の野菜から橙黄色の力ロチンを抽出して見せたので,力ロチンの色を強く印象付けカロチンヘの興味・関心を高めることができた。その後「みんなにもカロチンが取り出せるよ」と投げ掛けると,実験に意欲的に取り組み,力ロチンを抽出した成就感を味わうとともにカロチンの油溶性をとらえることができた。
さらに,図4「調理法によるカロチンの体内での吸収率」の資料提示で,栄養を効率よく摂取できる油いためのよさをとらえさせることができた。