平成7年度 研究紀要 Vol.25 個人研究6 -156/170page

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子をみると,学校で学習したことを生かしてさらに創意工夫したことが分かる。<図11〉

〈図11 実践カード〉
〈図11 実践カード〉

IV 研究の成果と課題

1 研究の成果
(1) 調理実験の導入について

 調理実験を導入したことにより,食品の栄養的特性や調理性への興味・関心を高めることができた。また,調理実験を通して,調理の原理・原則を体験的に学ぶことで,食品の栄養的特性や調理性を生かした調理法を児童が自ら獲得し,それらを調理実習に生かすことができた。
(2) 調理実験の方法について
 1.カロチンの抽出実験,カロチンの油溶性実験

 カロチンの抽出実験は,緑黄色野菜にカロチンが含まれていることを視覚的にとらえさせることができ,カロチンヘの興味・関心を高めることができた。
 力ロチンの油溶性実験は「水と油のどちらからカロチンが溶け出てくるだろう」と関心を持って取り組むことができた。また,班ごとの実験としたので,カロチンは油に溶けやすいという栄養的特性を,一人一人が実感を持ってとらえることができた。
 2.じゃがいものゆで方の実験
 固い部分の残った粉ふきいもと,残らない粉ふきいもの試食により,調理法の違いに目を向けさせることができた。実験では,じゃがいもの大きさや加熱時問の違いなど,自分なりの課題について調べた。 また,実験方法も児童に考えさせたので,主体的に課題解決に取り組み,じゃがいもの調理性をとらえることができた。
(3) 実践意欲について
 調理実習に対する児童の意識が作って食べることに終わってしまうと,その時点で学習への興味・関心はなくなり,他の調理学習でも役立てようとか,家でも作ってみようなどという実践への意欲を高めるところまではいかない。しかし,調理実験を導入したことで,カロチンヘの興味・関心が高まり,カロチンの栄養的特性を考えた調理法をとらえることができた。また,じゃがいもの実験では,自らの課題を持つことで,調理性を生かした調理法をとらえることができた。このため,調理実習に対する意識も,実験で分かったことを生かして自分なりに創意工夫したい,というように変わってきた。そして,自分なりに調理法を創意工夫したり,おいしいとほめてもらったりすることで,学習の成就感や満足感を味わうとともに,実践意欲も高まった。
 学習の成就感や満足感が実践意欲に結び付くことが明らかになった。

2 今後の課題
 本研究の成果を踏まえ,児童の調理法に関する課題意識を高める効果的な調理実験として,野菜の放水実験や卵の凝固実験などを導入し,児童が主体的に課題解決に取り組めるような指導方法について,さらに研究を深めていきたい。
 最後になりましたが,今回の研究にあたっては,福島市立第四小学校の校長先生,福島市立御山小学校の校長先生,中村由里子先生,福島光子先生及び多くの先生方にご協力いただきました。心から感謝申し上げます。
〈参考文献〉
小学校指導書 家庭科編(文部省)
小学校家庭科指導資料 食物の指導(文部省)
家庭科教育の理論と実践(家政教育社)
食物の授業(家政教育杜)
小学校家庭科指導資料 食物(明治図書)
調理学(地球社)
調理と理論(同文書院)
調理科学事典(医歯薬出版株式会社)
穀物・野菜の調理(朝倉書店)
絵で見てできる生物実験(講談祉)


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