研究紀要第108号 「一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究」 -047/175page

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一人一人のよさや違いを認め合う学級の人間関係づくりに関する研究(第2年次)

研究の要旨
本研究では,学級の児童生徒全員を研究対象として,「個人と環境(特に学級の人的環境)との調整」という視点から,アンケート調査と学級担任の観察を通して,児童生徒を《適応》 《順応》 《不適応》に分類した。この中の,環境への働きかけが弱い《順応》の児童生徒が,自信をもって環境へ働きかけるようになれば,互いのよさや違いを認め合う学級の人間関係が深められると考え,日ごろ,なかなか教師の目が届かないと言われる《順応》の児童生徒に焦点を当てて研究を進めた。
第1年次の昨年度は,意図的に他者とかかわる機会を設けた。具体的には構成的グループ・エンカウンターの中から自己理解や他者理解を深めることを目指した演習を取り上げて,校種ごとの発達段階を踏まえた表現方法を工夫するなどして指導援助にあたった。その結果,学級成員相互の心理的な距離が近づき,好ましい人間関係づくりが進むことが明らかになった。
第2年次の本年度は,昨年度の研究成果を踏まえ,小学校・中学校のそれぞれ2学級を研究協力学級として,研究主題にせまるために次のことを中心に実践した。
 1. 構成的グループ・エンカウンターの中から,特に,他者とのかかわりを深め,他者を受け入れることを目指した演習を取り上げて,自他の理解をさらに深めた。
 2. 互いのよさや違いに気づかせるために,グループ・カウンセリングの手法を生かした小集団による話し合いを工夫して行った。
その結果,《順応》の児童生徒を中心に,学級内の人間関係が拡大・改善され,互いのよさに目を向けるようになってきた。また,児童生徒一人一人が,自分らしさを出して活動できるようになってきた。これらのことから,級友とのかかわりを通して自分のよさに気づかせ,「ありのままの自分でいい」と実感できる場と機会を意図的に設定していけば,児童生徒一人一人のよさや違いを認め合う人間関係づくりが促進されることが明らかになった。

I 研究の趣旨

最近の児童生徒は,核家族化,少子化など社会全般の傾向を反映して,幼少期から人間関係が希薄になりがちである。中には,人間関係づくりがうまくできずに友達ができない,友情の意味を実感できないなどの理由で,孤立感を深めている児童生徒も見られる。また,生き生きとした学校生活を送っていても,ちょっとしたきっかけで,いじめや登校拒否(不登校)などの問題に至ってしまうことも少なくない。

これらは,児童生徒個人だけの問題でなく,学級の人間関係がうまくつくれないため,楽しく本音で語り合えなくなっていることも,その要因としてあげられる。これは,児童生徒一人一人が自分らしさを出すことができない,また,出したとしても,それぞれの自分らしさがよさや違いとして受け入れ合うことができないためと考えられる。

そこで,児童生徒一人一人が学級という集団との調和を図り,自分らしさを生き生きと発揮させるためには,互いのよさや違いを認め合う人間関係づくりが必要と考え,本主題を設定した。

なお,本主題にせまるためには,教師と児童生徒の信頼関係を研究の前提条件とし,学級の好ましい


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