平成8年度 研究紀要 Vol.26 個人研究 -170/175page

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る。教師の自己評価と生徒の平均との差の−(マイナス)は,生徒の平均のはうが低いとの意味である。

試行した教師10名の自己評価の値(平均)の平均値は,5段階で3.4,教師の自己評価の値(平均)と生徒の値(平均)との差の平均値は,−0.2である。図上にプロットされた教師10名の値は,これらの平均値から大きくぼらついており,教師による差が大きい結果となっている。

また,チェックリスト試行に協力した教師の感想は,次の通りである。

 ○ 教科担任の立場で実施したが,この結果は授業の改善にも大いに役立つと感じた。

 また,教師の意識と生徒の意識のずれ・生徒の感じ方の個人差の大きさを改めて感じさせられた。

 ○ 担任として,なかなか厳しい結果だと反省させられた。今後の教師生活に是非生かしたい。

 ○ 正直な評価にがっくりする点があった。理解のある先生でないと,実施は難しいかもしれない。

(3)考察

チェックリスト試行の結果から,教師の自己評価の値(平均)と生徒の値(平均)との差は,大きくばらついており,教師による差が大きいことが明らかとなった。

試行に協力した教師の感想にもあるように,生徒による担当教師のチェックリスト実施は,教師の日々の生徒とのかかわりを見直し,生徒指導・教育相談にあたって,具体的な対応の力量を高めていくきっかけとして,極めて効果が大きいと考えられる。

V 研究のまとめ

高等学校に教育相談を推進・定着させるため,第2年次の研究として,教師の生徒指導・教育相談にあたって,具体的な対応の力量を高める校内研修会の在り方を実践的に探った。

本研究は,次のようにまとめられる。

1.アンケート調査を行ったところ,次の点が明らかとなった。

(1)本調査対象校の3分の2の高等学校で,「校務繁忙」と「機運が盛り上がらない」などの理由によって,生徒指導・教育相談の校内研修会が実施されていない。

(2)校内研修会を,「問題行動への対応」をテーマに,「全職員」で「学期に1回」,「事例研究・協議形式」で実施したいと多くの教師が考えている。

2.校内研修会の内容として,「保護者へのよくないかかわり方」,「不登校生徒の気持ちを考えること」が,好評だった。

3.事例研究会を実施したところ,次の点が明らかとなった。

(1)「試みる」「手がかりをつかむ」「指導分担と見通しを持つ」と,段階を追って,校内に事例に対応する態勢が出来上がった。

(2)これらの段階に合わせて,教員一人ひとりの力量も高められた。

(3)そのためには,全職員の研修意欲が高く,まとまりのある校内組織で,計画的に実施できたことが重要だった。

4.生徒への指導援助の自己チェックリスト実施は,教育相談の治療を含めた予防的・開発的機能の,具体的な見直し項目を明らかにし,生徒への対応の力量を高めるきっかけとして,効果があった。

5.生徒が行う相談的教師のチェックリストは,教師の日々の生徒とのかかわりを見直し,生徒への対応の力量を高めるきっかけとして,効果があった。

6.本研究を通して,教師の生徒指導・教育相談の力量は,常に生徒への指導援助やかかわりを見直す真摯な心を基本に,校内組織との関係で高められ,具体的な対応の技術となって発揮されるといえる。

最後に,本研究にご協力いただきました各学校,並びに関係の諸先生方に厚くお礼申し上げます。

<引用文献>

1)日精研心理臨床センター編「実践力ウンセリングワークブック」 日本・精神技術研究所p13 (1992)
2)嶋崎政男「図解・生徒指導」学事出版p74〜75 (1994)
3)嶋崎政男「図解・生徒指導」学事出版p30〜35 (1994)
4)福島県教育センター編 生徒指導・教育相談資料3「先生はカウンセラー −問題行動を持つ児童生徒に対する指導援助の手引き−」p5他 (昭和63年)
5)平成元年度福島県教育センター研究紀要「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 −予防的な指導援助(第2年次)−」 (平成2年)
6)平成2年度福島県教育センター研究紀要「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 −開発的な指導援助のあり方(第1年次)−」 (平成3年)
7)平成6年度福岡県教育センター研究紀要「教育相談の考え方を生かした授業の在り方 一授業実践の分析を通して−」 (平成7年)

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