研究紀要第111号 「福島県の児童生徒の学力の到達状況に関する研究」 -040/166page
えを見つけようとする態度を育てることが重要である。
そこで,ここでは「量と測定」の大領域から,全国比が低い小問を例にとり,考察し,その領域に関する指導の要点を述べる。
1)小問例「単位量当たりの数量」
(平成7年度全国比73、平成9年度全国比81)
次の表は,ア,イ,ウの3台の自動車について,走った道のりと使ったガソリンの量を調べたものです。ガソリンIせ当たりで走れる道のりが―番長いのは,ア〜ウのどの自動車ですか。lつ選び,その記号で答えなさい。
走った道のり(km) 使ったガソリン(l) ア 700 50 イ 800 60 ウ 900 70 2)考察
「単位量当たりの数量「の学習は,速さや人口密度のように2つの異なった量の組み合わせでとらえる数量の学習であり,加法が適用されない性質を持っていることからも思考内容としては複雑なものである。
[資料1] (分かりにくい単元)
「意識調査」より
順位 単元名 選択(%) 1 単位量当たりの数量 45.0 2 文字と式 37.3 3 百分率とグラフ 35.3 4 体積 34.7 5 倍数と約数 34.3 5年の単元の中から・6年生の児童が、複数選択したものである。
[資料1]を見て分かるように,「単位量当たりの数量」の単元は,5年生の算数学習内容の中で,最も分かりにくい単元にあげられた。
[資料2]
(「平成8年度調査」より)
次の表は,AとBの2台の自動車について,走った道のりと使ったガソリンの量を調べたものです。ガソリンlリットル当たりで走る道のりが長いのは,どちらの自動車ですか。
走った道のり(km) 使ったガソリン(l) A 700 50 B 900 80
回答分類 回答率(%) A(正答) 66.6 単位量当たりの考えの不足 6.0 立式誤り 4.8 その他 3.0 無回答 19.6 さらに, [資料2]によると,「単位量当たりの数量」の小問の「無解答」が19.6%を占めている。
解答分類の「単位量当たりの考えの理解不足」については,Aの自動車にっいて「700÷50=14」,Bの自動車を「900÷80=11,25」と正しく立式し計算しているにもかかわらず,Bの自動車の方が長く走ると答えた児童であり,6.0%見られた。「立式誤り」は道のりとガソリン量の積を求めた児童で,4.8%見られた。
これらのことから,「単位量当たりの数量」の内容を正しく理解できていない児童が多いことが分かる。しかし,「単位量当たり」の考えは,乗法や除法の学習で,例えば「l皿当たり3個」というように既に学んでいる。5年生で連続量を扱うことから「単位量当たり」を意識させることになるが,今までの学習と結びつけて考えさせることで,児童の学習への抵抗が少なくなると考える。その際,「当たり」などの言葉そのものの理解が不足している児童がいることも考慮して指導することが必要である。