研究紀要第111号 「福島県の児童生徒の学力の到達状況に関する研究」 -048/166page
1)小問例「1次関数である事象」
(平成7年度全国比57,平成9年度全国比71)
次のア〜オのかな〜,yがxの一次関数せあるものをすべて選びなさい。 ア 800mの道のりを毎分xmの速さで歩くとy分かかる。
イ 体重がxcmの人の身長はycmである。
ウ 1辺のxcmの正方形の面積はycm 2 である。
エ 上底が2cm,下底がxcm,高さが4cmの台形の面積はycm 2 である。
オ 空の水槽に毎分3リットルの水を入れると,x分後にyリットルになる。
2)考察
小問例の全国北は,前回と比べ14ポイント上昇しているが,全国比71と低く,生徒にとって難しい問題であることが分かる。この問題に関連した調査結果が[資料1]である。 [資料1]の2の解答分類を見ると, 「比例と認識」した誤りや「その他」(解答を導き出した根拠が明らかでないもの),「無解答」の生徒を合わせると72,8%になる。特に,「比例と認識」した誤りの31,3%の生徒は,1次関数の式をy=axという比例の式とみなしている。このことから,比例を1次関数の特別な場合としてとらえさせ,あわせて「1次」の意味をふくめた1次関数の概念を正しく理解させる必要がある。
[資料1] (「平成8年度調査」より)
Aさんは家から福島駅まで,一定の速さで歩い
ていますAさんが,家を出発してから2分後に「駅
まで800m」,6分後には「えきまで500m」の地点
を通り過ぎました。次の問にこたえなさい。1 Aさんが歩く速さは,1分間に何mですか。
2 Aさんが家を出発してからX分後のえきまで
の距離をymとして,yを式で表しなさい。
小問
回答分類
回答率(%)
正答
誤答
1
速さ時間距離の関係 64.1 10.1 その他 0 18.2 無回答 ー 7.6 計
64.1 35.9 2 液までの距離を求めて 21.2 3.0 対応関係より 3.0 0 比例と認識 ー 31.3 その他 0 14.1 無回答 ー 27.4 計
24.2 75.8 1次関数の指導においては,具体的な事象の中から,伴って変わる2つの数量を取り出し それらの間にどのような関数関係があるか,どのような式で表されるかなどについて,生徒のイメージ化が図れるよう配慮していく必要がある。また,今後学習する高次関数との関連からも,「変化の割合が―定である」というl次関数の特徴を十分に意識づける指導が大切である。
3)指導の要点
ア 図などとの関連により,1次関数の式を理解 させよう
―般に1次関数の指導は,式の形で定義し,その後に対応表,グラフとの関連性を図るように進められることが多い。その過程で1次関数の概念を正しく理解させる工夫が大切である。特に,抽象化された式の持つ意味を生徒がイメージしやすくする工夫をしていきたい。
ここでは,具体的に,水そうに水を入れる例について述べる。伴って変わる2変量が何であるか,そ