研究紀要第112号 「基礎学力向上のための授業改善に関する研究」 -064/166page
調査の結果によると,特に項目6「自分で考えることで課題を解決している」の評価が低いので,思考活動の活発化を図る必要があることがわかった。
考えたり考えをまとめたりするときには,いろいろな行動が伴う。―般には「メモをする」「友達と討論する」はどの行動があるが,理科ではこれに加えて「図をかく」「グラフ化する」などの行動があ る。これらの行動は,思考活動の「課題を把握する」「予想を立てる」「解決方法を考える」などの目標を達成するために必要な行動であると考えられる。これらを思考活動の下位目標行動としてとらえた。そこでこの下位目標行動を具体的に把握するため,事前に次の調査を行った。
<思考活動の下位目標行動>
あなたはふだんの理科の授業で,考えたり,考えをまとめたりするとき,次のような行動をどのくらいしますか。
4:とてもよくあてはまる 4:あてはまる
3:少しあてはまる 2:あまりあてはまらない
1:まったくあてはまらないア 先生のお話や友達の発表をよく聞く。
イ 先生に質問する。
ウ 考えたことをノートなどに文で書いたりメモ したりする。
エ 友達と討論する。
オ まわりの人と話したり,友達に質問する。
カ 図やグラフ,モデルなどをかいてみる。
キ 教科書や参考資料,本などをみる。
ク ー人で,じっと頭の中で考える。図4はその結果を項目別に示したものである。
「話をよく聞く」「教科書をよく読む」などの行動が活発であることがわかる。それに対して,「先生に質問する」「友達と討論する」「図やグラフをかいてみる」などの行動は不活発である。つまり,生徒の下位目標行動が,「読む(見る)」「聞く」行動に偏っており,「かく(書く,描く)」「話す」行動が少ないということがわかった。
図5は,下位目標行動の調査項目ア〜クの個人ごとの平均と,「思考活動の程度」(調査3))の調査項目1〜8の個人ごとの平均との関係を表している。
図のように,両者の間にはかなりの相関(相関係数0.64)がみられ,下位目標行動が活発な生徒は思考活動も活発な傾向にあることがわかった。そこで,下位目標行動を活発にすれば,それに伴って思考活動も活発になるのではないかと考え,事前に調査で低い値を示した「かく」「話す」行動を促すため次ぎの実践を行った。