研究紀要第112号 「基礎学力向上のための授業改善に関する研究」 -086/166page
○思考活動と知識・理解,技能の獲得
思考活動の程度について事後に行った児童生徒の自己評価の結果と事後テストの成績との間には,おおむね正の相関からみられた。思考活動を活発にすることは,知識・理解,技能の獲得に効果があったといえる。思考動の評価は高いがテストの成績の低い児童生徒や,思考活動の評価が低い児童生徒についいては,個別に支援の方策を考える必要がある。
今回行ったいろいろな方策は,大きく,教材と指導法に分けられる。どんなに優れた教材であっても,それが授業の中で生かされて使われなければ,また,指導法がすばらしくても,適切な教材がなければ,効果はあがらない。教材と指導法が有機的に結びつき,さらにそれらが,児童生徒―人―人の期待に応えるようなものになってはじめて学習指導の成果が表れる。それを可能にするのが教師の役目である。そのためにも,教師は日頃から,児童生徒をよく理解し,児童生徒との信頼関係を築いていくように努カすることが大切である。
VI 研究のまとめ
1 考えようとする意欲は事象との出会い方とかかわりが深い。導入時における事象や教材の提示の仕方が思考活動を活発にするうえで大切である。
2 書く,描く,話す,作る,まとめるなど,自己表現活動や体験的活動を取り入れると思考活動が活発になる。
3 思考の仕方や思考の深さには個人差がある。思、考活動を活発にするためには,グループ学習やT ・T方式を取り入れるなどして,個人に応じた支援を行っていく必要がある。
4 思考は時間を要する活動である。児童生徒がゆ とりをもって考えることができるように配慮する必要がある。
5 授業において児童生徒の思考活動を活発にすることは,知識・理解,技能の獲得に効果がある。
<研究協カ委員>
郡山市立富田小学校教諭 大槻 誠 〃 郡山第―中学校教諭 宗像 達郎福島市立恒夫中学校教諭 平野 隆夫福島県立福島東高等学校教諭 鈴木 浩― 〃 福島西高等学校教諭 松本 仁子 〃 川俣高等学校教諭 安粛 ―喜
[参考文献]
1)「基礎学方向上のための情意面の活性化」
福島県教育センター研究紀要V01.26(平成8年度)2)福島県教育庁義務教育課編「基礎学方向上の手引」(平成7年)
3)福島県教育委員会「新しい学カ観に立った学習 指導と評価のエ夫」(平成8年)
4)文部省「理科における学習指導と評価の工夫・ 改善」大日本図書(平成5年)
5)北尾倫彦編「思考カ・判断カ」 図書文化社 (1995)
6)広島県立教育センター「研究紀要.第23号」 (1996)
7)文部省「中等教育資料」 (平成7年10月号)
8) 〃 (平成8年10月号)
9) 〃 (平成9年9月号)
10)「楽しい理科授業」明治図書(平成9年8月号)