研究紀要第113号 「情報ネットワークの教育的活用と授業改善へ向けた教育用ソフトウェアの活用」 -097/166page

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授業改善に向けた教育用ソフトウェアの活用

〜進路の学習を支援するソフトウェアの開発を通して〜

長期研究員 遠藤 高徳 佐藤 哲 西牧 伸弘 堂山 昭夫

研究の要旨

進路指導の目的は,「生徒―人―人が,将来に対する目的意識を持って,主体的に自分の進路を決定し生涯にわたって自己実現を図ることのできる能カや態度の育成」にある。これは今日的課題である「生きる力」の育成に直接かかわる内容ととらえることができる。進路の学習は,中学校の学級活動の中で重要な位置を占め,特に「職業調べ」や「職場見学」などの「啓発的体験学習」は,生徒が主体的に活動する中で,望ましい職業観や勤労観を形成し,将来の自己実現への意欲を高める上で大変重要であると指摘されている。しかし これらの学習は地理的条件や計画・準備の大変さなどで思うように実施されていない現状にある。

このような状況の中で,本研究は「啓発的体験学習」を手軽におこなうことができるソフトウェアの開発とその活用法の研究を進め,生徒が主体的に活動する進路の学習を展開することを通して,授業の改善を目指そうとするものである。

開発ソフトウェアは,マルチメディアのよさを生かし,働く人々の様子とインタビューした内容を動画や音声で提示することにより,生徒自身が職業に関するインタビューを疑似体験できるものである。

この開発ソフトウェアを活用した検証授業では,生徒の主体的な学習が展開され,様々な職業やそれに携わる人々の生き方,考え方にふれることができ,望ましい職業観や勤労観を形成するのに役立った。また,同時に実施した情意面の調査からも生徒の意識の変容が見られ,授業の改善に結びついた。

I 研究の意図

1 新しい教育の流れから

中教審の第一次答申において,これからの児童生徒に育てていく資質・能カは「変化の激しい社会に生きるカ」であると方向づけがなされた。そして,これを受けた教課審の「中間のまとめ において,新しい教育課程の方向が示された。

このような新しい教育の流れの中で,今,学校の授業をどのように改善するかが問われている。知識や技能を―方的に教え込む教師主導の―斉授業から脱却し,「私はこれを調べてみたい」という児童生徒―人―人の学習意欲に支えられた授業への質的転が求められたいるのである。

中学校の学級活動の中で重要な位置を占める「進路の学習」は,まさに「生きる力」の教育と密接に関連するものである。これまでの進路の学習を見直し,生徒―人―人の主体性をより大切にした授業へと改善を図ることは,今日的課題の―つである。

2  授業改善とコンピュータの活用

映像世代に生きている生徒にとって,コンピュータは大変魅力あるものである。特に,マルチメディアソフトウェアは,文字・静止画・動画・音声といった様々なメディアを―つのモニター上に提示できたり,教材の提示順序が柔軟であるため,生徒が自ら学習内容を選択できるなど,生徒の学習意欲を引き出し高めていくような様々な特徴を備えている。

こららの特徴を十分に生かすことによって,生徒の思考活動や表現活動をより豊かなものにしたり,生徒一人一人の興味・関心に応じた調べ学習をより広がりのあるものにしたりするなどの効果が期待で


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