研究紀要第114号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第1年次」 -111/166page
豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究(第1年次)
〜人間関係をつくる力の育成を通して〜
教育相談部
研究の要旨
本研究は,人間関係をつくるカの育成を通して,児童生徒が,互いに受け入れ,支え合える豊かな人間関係を育むことができる指導援助について,本年度から3年計画で追究するものである。
第I年次の本年度は,人間関係をつくる力を分析し これを基本的信頼感,自己肯定感,他者にかかわりたいという思いやその思いを伝える技能であるとおさえた。
また,人間関係をつくる方を育成するために,1)安心感が得られ,かかわり合うことが楽しいと実感できる学級集団をつくること,2)互いに相手を認め,受け入れ合うことを通して自己肯定感を高めること,3)他者とのかかわりを深めたいという思いや,その思いを伝える技能を高めること,の基本的な指導援助の方向性を示した。
さらに,児童生徒の人間関係をつくるカの実態を把握し,指導援助の在り方を探るために,アンケート調査を実施した。
本年度の研究を通して,「豊かな人間関係」を育むためには,児童生徒の発達段階を考慮しながら,特に安心感を土台として自己肯定感を高めることや,他者へかかわろうとする思いを高めることにカ点を置いた指導援助が必要であることが明らかになった。
I 研究の趣旨
児童生徒は,学校生活の中で,他の児童生徒や教師とかかわり合いながら様々な活動に取り組み,いろいろな経験を積み重ねている。その中で,それぞれが自らの課題を見い出し その解決に努力し,個性を伸ばしながら,自己実現・自己改革を図っている。
この「自己実現・自己改革」できるカが「生きるカ」としての学力であり,これを育むためには,友達,教師や家族など,他者との豊かな人間関係が求められる。
しかし,最近の児童生徒は,少子化や核家族化,共働きの増加や遊びの変化などによって,他者とかかわる機会が少なくなってきている。このため,親子関係や友達関係などにおいて,かかわり合う楽しさが実感できない児童生徒や自分自身に対する自信が持てないために,他者にかかわりたいという思いはあっても,相手にどのように伝えればよいかがわからずに,他者との人間関係がうまくつくれないで悩んでいる児童生徒が少なくないと考えられる。
向上心を持ち,よりよく生きたいと願っている児童生徒が,学校生活の中で自分らしさを発揮して人間関係を深めていくことは,これからの社会を生きていく上で,必要不可欠なものである。
このような現状から,教育相談部では,児童生徒が他者に関心を持ち,相手の思いを受け止めながら,自分の気持ちや考えを表現することができるように「人間関係をつくるカ」を育成し互いに受け入れ,かかわり合い,支え合える豊かな人間関係を育むことが必要であると考えた。この豊かな人間関係を育むことは,まさしく生きる方を育むことである。