研究紀要第114号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第1年次」 -112/166page
そこで,「豊かな人間関係を育む指導援助にかんする研究」を研究主題とし,本年度から3年計画で,人間関係をつくる力に焦点をあてて研究を進める事にした。
II 主題についての考え方
1 人間関係をつくるカ
人間関係は,乳児期の母親とのかかわりから始まり,十分な愛情や依存を味わう中で獲得される基本的信頼感が土台となってつくられると言われている。
幼児期には,家族や友達との小集団でのかかわりを通して,自分の行動が認められたうれしさや,逆に認められなかった悔しさなどを味わうことにより,自分以外の者の存在を意識し,自分の言動に目を向けるようになり,人間関係をつくる上での基礎が培われる。
学校入学後には,さらに大きな集団の中で,さまざまな感情を共有したりぶつけ合ったりしながら,友達や家族に受け入れられたい,認められたいという欲求を満たそうとして自分の考えや行動を修正していく。
そして,友達や家族の感情や期待,行動の仕方などを知ることによって,自分自身をさらに知るようになり,自分のよさに気づき,自分自身に対する自信(自己肯定感)を感じとるようになる。この自己肯定感に支えられて,「新しい人間関係をつくりたい」,「現在の人間関係を深めたい」など積極的に他者にかかわろうとする思いが高まっていく。
学校における児童生徒の人間関係も,このような体験を綴り返しながら広がりや深まりをもってくると考えられる。
これらのことから,本研究では,基本的信頼感や自己肯定感を土台とした他者にかかわろうとする思いや,その思いを伝える技能を人間関係をつくる力とおさえた。この人間関係をつくる力を基にして,他者からの思いを受け止めながら,1)他者に関心を持ち,2)他者にかかわりたいという思いが生じ,3)その思いを他者に伝え,4)思いが受け入れられるという4つの段階で人間関係がつくられ,深められると考えた(資料1)。