研究紀要第114号 「豊かな人間関係を育む指導援助に関する研究 第1年次」 -120/166page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

その結果,人間関係をつくるカと人間関係が深められる段階,安心感や自己肯定感を高める指導援助や他者にかかわろうとする思いや技能を高める指導援助の方向性が明らかになった。

また,アンケート調査により,多くの児童生徒が「みんなと―緒に活動したい」,「みんなのことを大切にしたい」という思いを持っているが,その思いを伝える技能は十分ではないこと,学級内での安心感が得られている児童生徒ほど,自己肯定感が高く,他者にかかわろうとする思いや技能も高まって,自分らしきを発揮して生活しており,級友との人間関係に満足していることがわかった。

したがって,人間関係をつくる力を育成し,豊かな人聞関係を育むためには,次のような指導援助が必要である。

(1)安心感,自己肯定感を高める指導援助

安心感の高い児童生徒は,自己肯定感が高いことや,自己肯定感が高い児童生徒は,他者にかかわろうとする思いや技能が高いという調査結果から,人間関係をつくる方を育成するためには,安心感や自己肯定感を高める指導援助が必要であることが確かめられた。

多くの児童生徒は,みんなと―緒にいたい,活動したいと願っており,また,自分自身をよくしたいと思っている。そこで,他者とかかわることが楽しいと実感できる場を設定し,互いに相手を認め,受け入れ合う体験を積み重ねることができるように指導援助を行えば,児童生徒は安心感や自己肯定感を高めることができるものである。

小学校3年生においては,―緒に遊べた,仲間に入れたということ,小学校5年生においては,―緒に活動でき,級友とのつながりが持てたということ,中学校2年生においては,深いつながりが持てる級友がいて,それぞれのよさが違うということが実感できる指導援助が大切である。

(2)他者とのかかわりを深めたいという思いと,そ の思いを伝えるための技能を高める指導援助

他者にかかわろうとする思いと,その思いを伝える技能は関係が深く,切り離せないものであり,技能を高めるためには,思いを高めることが欠かせないことがわかった。したがって,技能を高める指導援助とともに,他者とのかかわりを深めようとする思いを強める指導援助が必要である。

多くの児童生徒は,みんなと―緒に活動したい,みんなを大切にしたいという思いを持っている。この思いを互いに伝え合い,受け入れ,共有できる指導援助を行うことによって,児童生徒は互いの思いを理解し合うことができ,相手のことをもっとな口りたいというより能動的な思いが高まってくるものである。

また,思いを伝える技能については,相手への思いを確認し,自分の気持ちや考えを率直に表現しそれを相手がどのように受け止めたかを確認する活動を通して,児童生徒は相手の思いを的確につかみ,自分の思いを伝えることができるようになる。

以上のことから,安心感,自己肯定感を高める指導援助を土台として,第2年次には,主として他者とのかかわりを深めなうという思いを高める指導援助に,第3年次には,主として思いを伝える技能を高める指導援助に焦点をあてて,研究協カ校での実践・検証を通して,豊かな人間関係を育む指導援助の在り方を追究していきたい。


(参考文献)

○子どもの自己概念と自尊感情に関する研究
   平成元年度上越教育大学研究紀要 蘭干壽

○児童生徒相互の望ましい人間関係づくりに関す る調査研究(研究紀要第68号 平成4年8月)
    宮崎県教育研修センター

セルフェスティームの心理学
    ―自己価値の探求―
   遠藤辰雄・井上祥治・蘭干壽編(ナカニシヤ出版)

○子どもの心理と教育 北尾倫彦編(創元社)

○あるいじめから学ぶ ―望ましい人間関係の育成―
    江川政成著(大日本図書)

○図解・生徒指導 嶋崎政男著(学事出版)


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。