平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -126/166page

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グラフ4
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(3)研究1)から明らかになったこと

命題「授業観察の視点が多い→教職経験年数が長い」は、限定的に成立する。

教職経験年数10年目までは,教職経験年数と記述カ―ド枚数にかなりの相関が見られた。

このことは,教師が教職経験年数を重ねるごとに,授業観察の視点を獲得していることを示しているものと思われる。

要因については,該当の教師に直接インタビュー調査等を行い分析する必要があるが,日常の教育活動を通して,あるいは授業研究会,文献研究等の経験を通して,若い教師が徐々に視点を獲得していく様子が推測できる。仮説として掲げたように,特に教職経験10年以下の教師は,フリーカード法を取り入れた授業研究によって授業スキルを高めることができると言える。

教職経験11年以上では,授業をトータルなものと捉えており,授業のポイントを押さえた授業観察を行う事ができる。

グラフ5
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このことについては,教職経験年数と記述カード枚数にほとんど相関が見られないこと,否定的なカ―ドが10年目までの教師に比べて多いこと,内容的に授業設計に関するカードが多いことから判断することができる。

ここからは,次のような教師の姿がうかがえる。

○自分の教授スタイルが確立しており,自分の授 業との比較で授業観察を行っている。

○子どもの思考を見取る力に優れており,教師の 行動によって生じる子どもの思考を的確に読みと ることができる。従って,授業のポイントの把握 が的確であり,その観点で授業観察を行っている。

○教師の何気ない行動の中にその意義を見いだし, 何のための行動なのかを理解することができる。 そのため,行動のねらいを達成するための自分の 持ついくつかの代替案を想起して,効果を比較し ながら観察している。

教職経験の浅い教師でも,フリーカード方を用いた授業研究会を繰り返し経験することによって,少なくとも授業観察については教職経験豊富な教師と同様の観察眼を形成する事ができる。


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