平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -134/166page
ここでの調査は1つの側面からではあるが,構成感覚を調査1,2の具体的な切り口によって明らかにし,指導のヒントにしたいと考えるものである。
2 描画傾向と構成感覚の相関関係(調査1)画面の構成感覚を考えるとき,切り離せないのが個々の描画の傾向である。なぜなら,写実性がもたらす立体感や質感等が,これから描かれるであろう物,描かれつつある物の重さや構成上のはたらきをイメージさせ,配置やバランスの決定に関与すると思えるからである。
描写の写実性は,対象を客観的にかつ合理的に捉える見方に裏付けられている。大小の認識,奥行きを表す透視的な見方,立体感につながる陰影等の表現は,画面に―定の秩序を設定する。
これらの理由から,描画の傾向,つまり画面に表れた合理性,客観性の度合いを基に,調査対象を2つのグループに分け,お互いの構成感覚を比較し分析する。グループの優劣をつけようとするものではない。3 ワークシートの構成感覚への影響(調査2)
これは,調査lの結果を受けて行った。調査lの結果,描画傾向と構成感覚にはある程度の相関が認、められた。描画の写実性は本人の気付きと発見をベースにしたトレーニングや,適切な指導によって次第に形成されていく。ここでは,構成への認識や好みについても,演習を通した「気付き」によって変化が生じるのではないかという仮説を設定した。
その検証のために,調査1で使用した設問の回答に変化を与えるであろうワークシートを作成した。予め調査対象を2グループに分け,それぞれワークシート末実施グループと,ワークシート実施グループに対して同じ調査を行う。その結果を比較し分析する。
ワークシートの作成については,あくまで対象者の演習による「気付き」と「発見」に期待し,こちらの意図を悟られないようにするため,「構成」に関する文言はなくしてある。また実施に当たってはワークシートの演習の直後に調査を実施するよう配慮した。
II 調査の概要
[調査1]
(1)目的
描画傾向と構成感覚との相関をみる。
(2)調査方法
7つの設問からなる調査用紙により,美術の授業で全員―斉に行う。
(3)対象
高等学校第l学年美術選択者 231名
(4)設問の内容設問1 描画傾向の判定
設問2 画面としての認識の傾向
設問3 形態におけるシンメトリー傾向
設問4 画面におけるシンメトリー傾向
設問5 集合と拡散に関する傾向
設問6 リズムと統―に関する傾向
設問7 画面の中心と分割の傾向[調査2]
(1)目的
ワークシートによる演習が構成への気付きや好みの傾向に影響を与えるかをみる。
(2)調査方法
ワークシート演習を未実施の集団と,実施した集団とに分け,それぞれに同じ調査を行う。
(3)対象
高等学校第l学年美術選択者
ワークシート末実施グループ 総数220名
ワークシート実施グループ 総数198名
(4)設問の内容
ワークシートとのつながりから,調査lでの設 問2,3,4,7を選びそのまま使用した。混乱 を避けるため調査2でも同じ設問の番号で表記する。
設問2 画面としての認識の傾向
設問3 形態におけるシンメトリー傾向
設問4 画面におけるシンメトリー傾向
設問5 画面の中心と分割の傾向