平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -135/166page
III 調査の結果と考察
[調査1]
設問1 描画傾向の判定
先に述べたように,描画についての写実性の度合いを見る。つまり描画に見られる視覚的な合理性を判定する。そのため,次ぎの問題を出題した。
次の情景を思い浮かべて,回答用紙の枠の中に描いてください。 「日差しの当たる窓辺のテーブルに,透明なガラスコップ1つと,みかんが2つのっています。
コップには水が半分くらい入っています。
描く対象が目の前にないので厳密な意味での写実ではないが,生徒たちにとって身近な情景であり描画傾向の判定には妥当な出題であると考える。テーブル上の円筒形とおおよその球体,物が3つあることによる奥行き,日ざしによる明暗をみる。また,窓を描き入れるとテープルとの関係も加わる。
客観性を持たせるために,次の1)〜4)の具体的な項目を設定しそれを基準とした。
4項目のうち,いずれかlつでも該当しない項目を持っものをAグループ(描画傾向がどちらかというと視覚的・合理的でないもの),4つとも該当しているものをBグループ(描画傾向がどちらかというと視覚的・合理的であるもの)とした。なお描いてある物の位置や大きさ,構図は問題にしていない。
1)コップの断面の捉え方が視覚的であること。
図1のアの表現に近いもの。またはそう描 こうとしているもの。イ,ウは該当しない。
2) 陰影が形に沿い光の方向が―定であること。
3)おおよその透視図法に基づいていること。
図2は実際の作品である。l点透視図法に該当している。4)画面全体を1つの視点から描いていること。
図3にみられるような多視点的描画は該当しない。この結果,それぞれのグループの人数は次のとおりとなった。
Aグループ 144名 Bグル-プ 87名
以下,各設問についての,それぞれのグループにおける結果と考察を述べる。