平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -141/166page
じである。ワークシートの影響は認められない。ワークシートが,画面の中心の分散化への影響方を持たなかったか,画面の中心を求める傾向がそれほど可変のものでなかったということである。
しかし,画面左右の関係をみると,C,Dの間に差が認められる。それぞれのグループの,中央を除いた左右の合計は,Cの左側が100名,右側が57名である。それに対してDの左側が87名,右側が61名であり,C[こととべて数人が左から右へ移行している様子がみえる。それも,右端の2列への増加が顕著である。Cにおける結果をナチュラルな状態だとすると,Dの結果は何らかの影響を受けたことが分かる。調査1での結果と比較しても同じことが言える。 対象者の意識を画面右側に集中させたことによって,その残像が頭に残ったと思われる。
IV まとめ
1 構成感覚の指導について
描画傾向と構成感覚の相関を強く感じた例を,図18と図19との比較で見てみる。図18の描画は図式表現の傾向を持ち,主観的にして稚拙ではあるが,画面いっぱいを使っていてとてもおおらかである。窓枠の線は画面の上下をちょうど2等分している。窓の縦線による左右対称を基本とし,さらに太陽と輝くコップは画面中央を支点仕して点対称をなしている。とても厳密で安定した構成を行っている。これに対して図19には客観的な明暗の秩序が感じられる。描かれていない太陽の位置まで分かり,自然な空間を作り出している。ここでの構成は視覚的な奥行きの認識を含み,その感覚のはたらきは複雑で微妙である。
2つの調査に共通の設問7において,多くの対象者が画面のほぼ中央にその中心を取り,安定を図っている。最も安定する構成はシンメトリカルな構成であることを考えれば頷ける。画面の中心を中央からずらしていけばいくほど,また,非対象の要素を取り込んでいくほど画面に心理的な緊張と動きが生まれてくる。その緊張と動きをどのように望むかは個々の経験とその時の作品の表現意図による。