平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -143/166page

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生徒のよりよい人間関係を育む指導援助の在り方(第2年次)

ー人間関係を育むスポーツの特性を生かした保健体育の授業を通してー

長期研究員 大 杉 和 樹

研究の要旨

平成8年度,中学校2年生を対象に「スポーツに関するアンケート」を実施し,よりよい人間関係を育むには,豊かな感情の交流が必要であることが分かった。

本年度は,前述のアンケート結果をふまえ,どのような指導援助を行えば,生徒―人―人が,感情を表出し,互いに気持ちを受け止め合い,教師と生徒,生徒相互の理解が深まり,よりよい人間関係が育まれるのかを,保健体育の授業を通して探った。

よりよい人間関係が育まれる授業の流れを,生徒のこころの動きに着目し,1)こころが柔軟になる,2)こころが授業に向き合う,3)感情を味わう,4)感情を分かち合うの4段階におさえ,各段階の指導援助に工夫を加え,教育相談の機能を生かした教師のかかわりを進めた結果,次のことが明らかになった。

(1)学習が深まる過程で,生徒の感情が表出され,感情の交流が促進されること。

(2)学習に対する生徒の思いく願い,希望等)を理解することを基盤にした「認め励ます,共感する, 促す」等の教師のかかわりが,感情の交流を深めること。

(3)感情を表出し,感情の交流を深めることが,教師と生徒,生徒相互の理解を深めよりよい人間関 係を育むこと。

(4)授業で育まれたよりよい人間関係は,生徒たちのこころに安心感を生み,クラスの人間関係もよ りよくなっていくこと。

I 研究の趣旨

今日,自分の感情をコントロ―ルできない子どもの引き起こす問題行動が大きな社会問題となっている。子どもは,様々な感情を抱いて学校生活を送っているが,その中には,感情をコントロ―ルできずに悩んでいる子どもも少なくない。それは,自分の感情を受け止めてもらえない,自分の感情を否定的に受け取られてしまうなどの体験により,感情を素直に表出できない子どもたちである。

このような状況の中で,子どものこころを開き,よりよい人間関係を育むための様々な試みが行われている。その試みの―つとして,子どもにとって魅力のある授業づくりがあげられる。

本研究は,「親和性」 という特質を持つ保健体育の授業を通して,生徒のよりよい人間関係を育む指導援助の在り方を探るものである。昨年度, 「子どもの人間関係は,授業を通して育まれていく」 との考えに立ち,中学校2年生を対象に「スポーツに関するアンケート」を実施した。その結果,授業を通して人間関係を育むには「自分の感情が味わえる,感情の交流が体験できる」など豊かな感情の交流が必要であることが分かった。

本年度は,このアンケートの結果をふまえ,「感情の交流の体験」に焦点を当て,生徒のよりよい人間関係を育むための指導援助の在り方を探っていく。

[研究の見通し]

保健体育の授業の活動過程の中で,生徒―人―人が感情を表出し互いに気持ちを受け止め合える場を設定し教育相談の機能を生かしたかかわりを行えば,教師と生徒,生徒相互の理解が深まり,よりよい人間関係を育むことがで


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