平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -144/166page
きるであろ。 II 研究の内容・方法
1 研究の内容
(1) 感情,感情の表出,感情の交流について先行研究・文献から基本的な考え方をおさえる。
(2)感情の交流を深め,よりよい人間関係を育むことができる保健体育の授業の基本構想を立案する。
(3)感情に関する基本的な考え方,授業の基本構想をふまえ,感情の交流を深める具体的な手立てを考え,授業を実施する。
(4)生徒の変容をアンケート,授業記録,教師の観察などからとらえ,授業を分析し,よりよい 人間関係を育むための指導援助の在り方をまとめる。
2 研究の方法
(1) 実践授業
○対象―中学校2年生(男子19名,女子16名)
○抽出生徒―中学校2年生 A男
○単元名―バスケットポール
(2)分析の方法
○授業記録,アンケート,授業実践者への聞き 取りをもとに抽出生徒の変容を分析する。
○教育相談の機能を生かした教師のかかわりを,感情の交流という視点から分析する。
○アンケートをもとに,人間関係に関する生徒の意識の変容を分析する。
研究に関する基本的な考え方
1 よりよい人間関係とは
よりよい人間関係を,次のようにおさえた。
教師と生徒,生徒と生徒が互いに気持ちを受け止め,理解が深まった関係
2 感情について
「感情は,対象になるものに向き合うことによって生まれる」(なだいなだ「心の底をのぞいたら」P99筑摩書房)という考えを基に,本研究では,感情を 「学習に向き合うことによって生まれる心の動き」 とおさえた。つまり,感情は,学習に向き合うことで生まれてくるものであり,その向き合い方によって生まれてくる感情も違ってくるのである。
また,「学習にどう向き台うか」が,感情にかかわる大きな要素であることに着目し,保健体育の授業を通して,よりよい人間関係を育むことをねらいとする本研究においては,運動の特性にふれる楽しさが,「学習にどう向き合うか」と大きく関連するものと考え研究を進めていく。
3 感情の交流について
感情が表出されると,その時点で感情の交流が行われたととらえがちである。しかし感情の交流は感情を表出する→表出した感情を相手が受け止める→表出した感情を受け止められたと実感するというサイクルで行われることから, 表出した感情が,受け止まられたと実感できて初めて,感情の交流は行われた ものとおさえた。また,感情の交流は,コミュニケーションの―つであるとおさえ「コミュニケーションは,伝える側からの一方的な手段ととらえがちであるが,読み取る側の一方的な力によるところが大きい」(長田 弘「朝日新聞」1998年1月6日付)との考えを基に,感情をどう受け止めるのかが,感情の交流を深めるポイントになると考えた。このことから,感情を受け止める方を育んでいくことが感情の交流を深めるうえで大切であると考えた。
4 感情の交流が深められ,よりよい人間関係が育まれる保健体育の授業
上記の基本的な考え方に基づき感情の交流が深められる保健体育の授業を,次のようにとらえた。
(1)感情が豊かに引き起こされる授業
生徒のこころに感情が豊かに湧いてくることで,感情の交流は豊かになる。感情は,学習に向き合う