平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -152/166page
ことに関して,次のような感想を得た。
名前を呼んで声をかけることが,―人―人をよく見ようと意識する事につながった。また,自分の声かけに生徒が反応し,嬉しそうな表情を見せた時など,生徒と―緒の気持ちになれたような気がした。
(5)分析と考察のまとめ
(1)〜(4)の分析と考察から感情が表出され,感情の交流が深まり,よりよい人間関係が育まれる保健体育の授業を,次の図のようにとらえた。
教育相談の機能を生かした教師のかかわり教育相談の機能が生かされることによって学習そのものが深まるとともに,生徒のかかわり合いが広がり,人間関係も深まっていく。また,逆に人間関係が深まることによって学習も深まっていく。このように学習の深まりと人間関係の深まりは相関関係にある。このことから,上図のような構造でよりよい人間関係は育まれていくと考えられる。
V研究の成果と課題
1 研究の成果
(1)授業で生徒が感情を表出し,感情の交流を深めることが,生徒相互の理解を深めよりよい人 間関係を育むことが分かった。
(2)授業で育まれたよりよい人間関係は,生徒たちのこころに安心感を育み,クラスの人間関係 にもよりよい影響を与えることが分かった。
(3)学習の深まりと人間関係の深まりは,密接な 関係にあり,学習活動を通してよりよい人間関 係を育むには,学習そのものの深まりが欠かせ ないことが分かった。
(4)教育相談の機能を生かした「認め励ます,共 感する,促す」等の教師のかかわりでは,次の 事が基盤になることが分かった。
・学習に対する生徒の思い(願い,希望)を理解すること。
・ 生徒―人―人に直接的・具体的にかかわること
・教師自身が生徒の感情を共有できる感性を身に付けること。
今後の課題
授業で育まれた人間関係は,クラスの人間関係によい影響を与えることが分かった。しかし,生徒の人間関係は,様々な要素が絡み合い育まれるものである。今後は,次の2点からより人間関係を育む指導援助の在り方を探っていきたい。
(1)保健体育の授業に限らず,他の教科の授業においても,学習を深めることを通して人間関係を育む指導援助の在り方について探る。
(2)学習活動の中での教育相談の機能を生かした望ましい教師のかかわりについて探る。
最後に,本研究にご協カいただきました,安達郡白沢村立白沢中学校長佐藤善則先生をはじめ,青柳茂宏先生,益崎弘幸先生,佐藤悦江先生に心から感謝申し上げます。
[参考文献] 1)「心の底をのぞいたら」 なだいなだ著 筑摩書房
2)「感性の覚醒」 中村雄二郎著 岩波書店
3)「学校体育経営ハンドブック」 宇土正彦編著 大杉館書店
4)「だれもが身につけたい生徒指導・学校教育相談の技法 全国教育研究所連盟 ぎょうせい
5)「個々の児童生徒に添う 生徒指導と教育相談」 今井五郎著 ぎょうせい