平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -154/166page
(4)事例を基にした学校・家庭のかかわり方の模索
2 研究の方法
不登校についての理論研究と資料の収集
1)不登校についての理論研究と収集した資料から,不登校の現状,背景と主な要因についておさえ,不登校の子どもに見られる傾向,特徴的な問題点について知る。
(2)来所相談,適応指導教室における不登校の事例の分析と検討
1)教育相談を通して変容していく子どもの姿から,子どもの気持ちや思いを分析するとともに, 担当した所員や指導員,教師,保護者の観察等 から不登校の子どもの訴えを探る。
2)不登校の子どもの訴えに応えるために,どのような見通しをもち,どう働きかけ,その結果 をどう考えたかを分析,検討する。
3)分析,検討したことから明らかになったことや,不登校の子どもを目の前にした教師や保護 者が取り組めるかかわり方,不登校を生み出さない学校や家庭でのかかわり方についてまとめる。
なお,ここで用いる『不登校』,『不登校の子どもの訴えに応える』を次のようにおさえた。
『不登校』の定義
文部省では『登校拒否』について,「登校拒否とは,何らかの心理的・情緒的あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校したくともできない状況にあること(ただし病気や経済的な理由によるものを除く)いう」と定義しでいる。『不登校』と『登校拒否』の用語の区別については「学校に登校できない子どもたちが明確に登校を拒否しているとは限らない」という考え方から,ここでは『不登校』という表現で統―する。
(生徒指導・教育相談指導資料4 p1)
『不登校の子どもの訴えに応える』
「不登校の子どもにとって重要なことは,単に学校に通える状況になればそれでよいというわけではなく,不登校という状況を克服する過程で子ども自身がどのような力を身につけ,いかに成長したかということである」
(学校不適応対策調査研究協カ者会議報告 Pl6 平成4年3月 文部省 )
このことを踏まえ,不登校の子どもの訴えに応えることを,本人が自分の生活を見つめ,自主的な生活を目指していけるようなかかわりをしていくことであるととらえる。
III研究の実際と考察
1 不登校の現状,背景と主な要因
文部省の調査資料や諸統計資料から,不登校の 現状,背景と主な要因を次のようにおさえることができる。
(1)不登校の現状
○小学校,中学校とも不登校の子どもは,全国的に増加している。特に平成8年度は急増している。
不登校の子どものうち約3割は当該年度中に再び登校するようになっている。
○不登校に陥った直接のきっかけとして学業不振や友人関係をめぐる問題など「学校生活の影 響」をあげるものが4割近くいる。また,3割近くが「家庭生活での影響」をあげている。
(2)不登校の背景と主な要因
○特定の子どもに特有の問題があることによって起こるといったようなパターン化して予測さ れるものではなく,子どもがある程度共通して潜在的にもちうる「学校に行きたくない」とい う意識の―時的な表出として不登校となるケースがある。
「授業がわからない」「授業の進度についていくことができない」ということが,「学校に 行きたくない」「学校に行ってもつまらない」