平成9年度 研究紀要 Vol.27 個人研究 -157/166page

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(1) 学習のつまずきから不登校になり,長期化している事例

1)対象 小学校6年生 女子 (J子)

2)問題

○4年生で算数の遅れが目立ち,自信をなくし,不登校になる。

○外出を避け,家に閉じこもりがちである。

○生活が不規則になりがちである。

3)資料

○欠席日数は,4年生では約140日,5年 生では約200日である。

○5年3学期から相談機関に通う。

5年生になってからは,担任が家庭訪問をすると話すようになる。

○家族は,両親と本人,妹―人である。

4)指導援助の方針

<相談機関 → 本人>

○長い期間,学校や友達とかかわりが希薄だったことを踏まえ,焦らず自分のペースで生活できるよう見守り,信頼関係をつくる。

○生活のリズムがつくれるように声をかけ見守る。

指導援助の経過

学校・家庭の本人とのかかわり

担任は,必要に応じて家庭訪問をし家族と話をしたり,本人の状態によっては直接本人と話をしたりしている。家庭では,なるべく―緒に外に出かけるように努めている。家族以外の人とふれ合える機会として,本人の希望も聞いて相談機関に定期的に通うことを決める。また,学校に行かなくても本人が規則正しく起床や食事ができるよう声をかける。

J子の不安の軽減を図り,自信をつける相談機関のかかわり

相談機関では,J子は不登校の期間が長かったので,少しずつ時間を意識したり,自分に合った学習に目が向いたりするのを待ち,まずは,定期的に教育相談に通えることを認め励ました。

初めのうち,J子は,朝遅れてきたり休んだりする時もあったが,6年生の7月ころには,時間どおり通えるようになり,苦手な算数の学習の準備をする姿を見せるようになってきた。算数の教科書を恥ずかしそうに隠し隠し出す姿,それは「算数もできるようになりたい…」 「助けて(教えて)」というメッセージと考えた相談員は,個別指導を試みた。これまでのゆったりとしたかかわりでつくり上げた信頼関係をもとに,J子がつまずき始めた4年生の内容から指導を積み重ねた。

「算数,やったらできた」「少しずつ,わかってきてうれしい」という自信がJ子の明るさを引き出していった。

前を向き始めたJ子

9月になり,相談機関で―緒に活動するようになった6年生のK子と,友達として,よきライバルとして活動することができるようになってきた。同じころ,担任や級友が宿泊学習への参加を誘ってきた。家族も本人が宿泊学習に参加できるよう,―緒に買い物をしたり準備をしたりして,本人の「行けそうだ」という気持ちを支えてきた。結果は,宿泊学習への参加はl日だけで帰宅することになったが,学級集団に入っていこうとしたことは,J子にとっては大きな―歩だった。

3学期になり,担任から中学校入学へ向けての話を聞いたJ子は,不安をもちながらも「3学期から学校に行きたい。中学校への準備もしたい」と家族と―緒に準備を進めている。

(学校でのよかったかかわり)

○家庭訪問の際,教師は無理をせずに本人の状態を見ながら対応している。

学校行事や進路についての情報をきちんと伝え,さりげなく学校行事等に誘っている。


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