研究紀要第116号 「学校の活性化を目指す教員研修に関する研究 第3年次」 -008/117page
III 校内研修充実のために,今何が必要なのか1 校内研修を進める上での問題点
校内研修を進める上での第1の問題点は“研修時間確保”である。先生方の任務は多岐に渡っており,研修のために全員が揃ってまとまった時間を確保することはなかなか難かしい。授業の一部しか参観できない,事後研究会に途中までしかいられない,といったことが応々にしてあるものである。
次に,“個々の教師に研修意欲が乏しい”という問題がある。「学校としての研究課題が一人一人の先生方の思いと一致しない」「研修が自分の授業力の向上と結びつかない」といった考えなどがあり,共通課題が先生方一人一人にとって解決しなけれぱならないものになっていないといったことが上げられる。先生方一人一人は経験年数も違えば抱えている課題も多岐にわたっており,一人一人が研究の主体者としての自覚を持つのは難かしいものである。
さらに,“計画が概括的で見通しが甘い”という問題がある。目標が抽象的で達成のための具体的な手立てがなく,授業実践をとおして検証することが目標とどう結び付くかはっきりしないまま検証授業を実施し,1時間の参観授業で子どもたちの活動に好ましい姿が見られると,その姿を数え上げ,子どもたちの変容を確かめないままに授業が成功だったとしたり,授業研究をしたというだけで満足してしまったりしていることがある。
2 問題解決のための考え方
ここに取り上げた3つの問題は,現職教育担当等からよく聞くものである。しかし,研修時間確保の工夫について言えぱ,
・授業者が工夫した場面に絞って参観する
・フリーカードの提出によって退席した後も間接的に意見を伝えられるようにする
といった方法も考えられる。あるいは,教科や学年を単位とするチームで研修し,全体の場では各チームで焦点化された内容を迫究する,といった協議会の運宮の工夫も考えられる。
また,一人一人の教師の研修ニーズに応えるには,研修内容が個々の教師の要求に合ったものとなるよう,一人一人の思いや願いを十分聞き取り,それらを生かして共通課題を設定することが大切である。その上で,授業研究参観において観察分担をするような場合にも,
・板書に課題を感じている先生に板書を中心とした観察記録を分担してもらう
・子どもたちとの応答に課題を持っている先生に教師の働き掛けの問題点を見てもらう
といった分担をするなどにより,校内研修への参加意欲を高めることができるものと思われる。
3 効果的な校内研修とするための手立て
校内研修を充実したものとするには,上記のような問題点を克服するとともに,次のようなことが大切なことと考えられる。
(1) 教師一人一人の日常の授業とかかわりのある研修とする
校内研修は実践研究であることを共通理解し,自分の日々の授業をよりよいものにするために身につけるべきことを押さえて研修に取り組むようにしたい。子どもたちの主体的な活動が以前と比ベてこれだけ見られるようになった,授業者の子どもたちへの援助活動がこれだけ多くなった,といった具体的な変容を求める研修としたい。
(2) インフォーマルな話し合いができる場を保障する
研修する先生方一人一人の力量を高めるという願いを達成することを大切にするため,それぞれの先生方の気付きや疑問を基に話し合うようにし,形式にとらわれないようにしたい。経験の浅い先生も深い先生もそれなりに発言でき,しかも易きに流れない研修会となることが望まれる。
(3) 継続性と広がりを大切にし,結論を急がない
授業研究の過程で望ましい活動が見られても,すぐに成果があったと判断せず,次の授業・別の学級・異なる学年と実践を継続して成果と確認するようにしたい。1度や2度の実践結果から結論づけると気付かない特別な条件があるなどの場台が考えられる。