研究紀要第116号 「学校の活性化を目指す教員研修に関する研究 第3年次」 -012/117page

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校内を挙げて取り組んでいる様子が伺われた。

(5) 「授業参観」研修及び「研究授業」研修の効果をあげる条件整備 ※複数回答(%)

研修の効果をあげる条件整備

ア 校内組織の積極的な協力
イ 複数の教師の参加
ウ 対象教員の積極的な研修意欲
エ 研修主任や学年主任等の積極的な関与
オ その他

「授業参観」研修では,校内組織の積極的な協力を,「研究授業」研修においては,対象教員の積極的な研修意欲を第一にあげている。それらの条件が研修成果に大きな影響を及ぼすとの意識を指導教員が持っていることが分かった。

(6) 対象教員が自認する教科指導力

一年間の研修を経て,対象教員が自信を深めたものが“学習指導案の作成”である。「授業参観」や「研究授業」を通して自他の指導案に触れ,作成に対する抵抗感より自信をのぞかせている。また,“学習の遅れがちな児童への指導”にも意欲を見せており,個に応じた指導に取り組もうとする意識が表れている。ただ,対象教員と指導教員の双方が重視していた“発問の仕方と児童の反応の生かし方”は残念ながら苦慮していることが分かった。

V 研究のまとめと今後の課題

1 研究のまとめ

本研究では,初任者研修における教科指導力の向上を図るための,より具体的な「授業参観」研修と「研究授業」研修の視点を明らかにすることであった。前述した調査結果から,次のことが分かった。

(1)「授業参観」研修について
1. 多くの教科を参観する必要性
○ 実施教科が特定の教科や学年に偏りがちにならないように配慮する必要がある。
2. 事前・事後研究の充実
○ 授業提供者と指導教員,そして対象教員が十分な連絡を図る必要がある。
3. 研修に工夫を持たせる必要性
○ 参観テーマを設定する際,“教科指導 ”領域の他項目との関連を図るなどの工夫が望まれる。
4. 対象教員の悩みや要望に適宜対応した指導
○ 学校や児童の実態を踏まえつつ,対象教員のニーズに応える指導が必要である。
(2)「研究授業」研修について
1. 対象教員の意向に十分配慮した『中心となる研究主題』の設定
○ 児童の実態や実施校の教育課題を踏まえつつ,対象教員が抱える課題を考慮した設定が必要である。
2. 多くの先生方の参加の必要性
○ 指導教員をはじめ,校長・教頭他多くの先生方が参加し,様々な場面を多面的に,かつ具体的に指導する必要がある。
3. ゆとりを持った研修の実施
○ 実施時期については,実施校の実情や研修の進捗状況も勘案しつつ,駆け込み的にならないようにすることが大切である。

2 今後の課題

(1) 基本的指導技術を多面的に会得するために,自己課題を明確にし,多くの授業を参観するとともに,「研究授業」も5回という規定にとらわれず,数多く実践することが効果的と思われる。

(2) 実施校においては,対象教員が安心して研修できる雰囲気作りに努めるとともに,事前・事後研究も弾力的かつ効率的に実施していくことが重要と思われる。

(3) 研修推進上,校内組織体制の積極的な関与は不可欠である。対象教員や指導教員に対する管理職のアドバイスや賞賛,励ましは,更なる研修意欲に結び付くものと思われる。

アンケート調査にご協力いただいた対象教員と指導教員の先生方に深く感謝いたします。


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