研究紀要第116号 「学校の活性化を目指す教員研修に関する研究 第3年次」 -021/117page
「総合単元的な道徳学習」「発問」等であった。
その他の中には,「評価」「パターン化」「子どもの発言の取り上げ方」「板書」「導入」等が出された。
「道徳的実践力」をキーワードに挙げた教師は,次のような問題点を指摘した。
・道徳の時間に高まりつつある心情が1単位時間で途切れ,実践へと結びつかない。 ・道徳の時間で学習した内容(価値)を実生活で生かすことができない児童が多い。 ・道徳の授業では,子どもの心に響くことを願って,あの手この手での指導を工夫しているが授業後,価値の高まりを感じることがあっても長い時間継続しない。 また,「資料」をキーワードとして挙げた教師は,次のような問題点を指摘した。
・いじめ,生命尊重などについて指導する際,資料を効果的に活用できない。 ・子どもにとって現実味がありインパクトの強い資料を探すのが難しい。 ・読み物資料を使っているが,その他の資料で道徳の授業に使えるものが少ない。 以上の調査から,諸問題は道徳の授業に関するものが多く,教師が道徳の授業の成果に不安を感じたり,効果的な資料の選定や開発に苦慮したりしている現状が伺える。
(2) 教師のニーズに合った「道徳教育通信」の作成
1. 道徳教育通信の必要性
教師がかかえている諸問題解決のために,また,子どもが求めている道徳の授業に近づけるために,道徳教育に関する校内研修を活性化させることは,たいへん重要なことであると考える。
しかし,校内研究の課題が教科指導に関するものであったり,道徳の授業研究などが設定されていない場合は道徳教育に関する研修が活性化されにくい。
そこで,校長や教頭の管理職は,教師がかかえている道徳に関する諸問題に対して通切な指導助言をし,道徳教育に対する意欲を高めるよう工夫する必要がある。その一つの方法として,教師の道徳教育に関する諸問題の解決や子どもの要望に応える授業づくりにつながる「道徳教育通信」の発行が考えられる。通信を定期的に発行することによって,道徳教育に関する研修の活性化が期待できる。
2. 道徳教育通信の備える要件
発行する道徳教育通信は,教師のニーズに応えるものでなければならない。具体的に備える要件を挙げるとすれば,次のようにまとめられる。
1 「道徳的実践力」については,道徳教育の内容全体にかかわる問題なので,道徳教育の充実に関する内容を備えている必要がある。 2 「資料」に関する問題点が多いので,資料の選択や開発に関する内容を備えている必要がある。 3 道徳の授業の基本的な事柄についても理解しやすい内容を備えている必要がある。 4 道徳の授業の応用・発展的なことが学べる内容を備えている必要がある。 3. 道徳教育通信の実際
上記の道徳教育通信が備える要件をもとに,その試案を40種類作成した。
試案は,基本的に一つの項目に対してA4版1枚とし,発行日や発行番号が記入できるようにした。文章表現は,できるだけ読み手の実践意欲を喚起するよう平易に記述にした。
作成した試案は次のようなものである。