研究紀要第117号 「学力向上のための授業改善に関する調査・実践研修 第3年次」 -036/117page
cm 方眼上に示された図から,必要な部分の長さを求めさせた。さらに方眼上に示さない図を提示することにより,台形がいろいろな図形に分けられるという考えに気付きやすくした。また,問題の台形の図には辺の長さや高さを表示せずに,面積を求めるために必要な辺の長さや高さを自らの求め方に応じてそれぞれ測るということにした。【資料3】
「比較検討」の場では,前述のような多様な考えが出されたが,考えの根拠を明らかにして,既習の図形求積とどのように関わっているのかなどを中心に発表させ,それぞれの考えのよさを気付かせた。
イ 考 察
児童は,友達の発表を聞くことにより,多様な考えがあることに気付くことができた。ここでの学習が本時以降の学習で生かされることになると思われる。また,それぞれの考えについて教師から補足説明があった。例えば,倍積変形の考え方では,児童が発表した「(もう一つの合同な台形が)あるものと考えて」という考え方をほかの児童にも分かり易いように説明する場面があった。数学的な考え方の力をつけるという点では効果的であった。
(2) 「割合のくらベ方と表し方」の授業
「こみぐあい」について理解し,どのような方法で異種の2つの量を比較するかをねらいとした授業での実践である。なお,本時は2時間扱いとした。
1. 児童に提示する問題の内容を吟味する
ア 実態の把握
ある教科書では,花壇における花について「こみぐあい」を比較させる問題を教材にしている。事前調査で,「『こみぐあい』ということばで,どんなことを想像するか」の問いでは,ホテル,病院,遊園地,デパート,コンサート,電車等の乗り物など,人のこみぐあいを想像する児童が多かった。さらに,【資料4】において「どちらがこんでいるか」という問いに対する反応は,以下の結果であった。
Aがこんでいる……71%
Bがこんでいる…… 0%
どちらも同じ………29%このことから,児童にとっては一カ所により固まっているほど「こんでいる」という意識があると考えられる。その意識を取り除くためには,勤きがあり,こみぐあいの対象が同じ場所にとどまらないものが提示する問題として望ましいと考えた。さらに,子どもの日常生活とも密着しているもの,容易に想像できるものという観点からデパートにおける客のこみぐあいを題材として取り上げた。(「問題」は後述。)
イ 考 察
「問題」の場面がイメージしやすく.デパートでの経験を話す児童が多くみられた。そして,「こんでいる」ときの様子のたいへんさなどが話題となり,「問題」そのものが,児童自身にとってより身近で解決しようという意識がもてるものであった。
2. 児童がつますく言葉に配慮した指導をする
ア 授業の実際
(ア) 「〜あたり」の指導
この言葉は児童が日常的に使用している言葉ではなく,イメージもとらえにくい。そこで,【資料5】のような展開で行った。「問題」は「3つの店で,いちばん安くリポンテープを買えるのはどこか」の安さ比べである。自力解決の中で,児童は「1m