研究紀要第117号 「学力向上のための授業改善に関する調査・実践研修 第3年次」 -037/117page
の場合」,「1mとみると」,「10円にしたとき」など,「〜あたり」に相当する言葉を用い,問題を解いた。その後,教師は「〜とみると」,「〜にしたとき」,「〜の場合」等は,「〜あたり」の言葉でまとめることができることを指導した。
(イ) 「こみぐあい」の指導
「〜あたり」と違い,「こんでいる」,「すいている」は日常的に使っており,その様子をイメージしやすい。そこで,【資料6】の展開で行った。
児童から「こんでいる」,「すいている」という言葉からどのような様子をイメージするか自由に発表させ,「こみぐあい」の意味をとらえさせた。
イ 考 察
【資料5・6】の指導展開は,とらえさせたい言葉について,児童がどれだけの関わりがあるかによって展開が異なることを示したものである。また,児童にとらえさせるべきものなのか,あるいは教師が教えるべきものかによっても指導方法は変わることがわかる。ただ,「こみぐあい」については,どのようなイメージを持つかを中心とした展開であった。例えば,同じ大きさのマットに5人立たせたときのことを考えさせる。様々な立たせ方があるが,いずれも「こみぐあい」は同じであると気付かせることができる体験的な活動等の方法も考えられる。
3. 問題提示の仕方を工夫する
本問題を取り上げた理由については前述したが,本時における問題は次の通りである。
米村君は,デパートのバーゲンセール会場でお手伝いをすることになりました。会場は3階建てのビルで,1階・2階・3階に分れています。米村君は,一番込んでいる会場のお手伝いをすることになりました。さて,どの階のお手伝いをすればいいでしょうか。 3階・・・・・40人(500m 2 )
2階・・・・・30人(500m 2 )
1階・・・・・30人(300m 2 )ア 授業の実際
3階建てのビルの絵を示し,はじめに1階の様子を知らせた。その階の部分の絵をはがすと人数と面積が分かるようになっている。次に,2階の様子を知らせる。ここで,教師から「どちらがこんでいるだろうか」と質問した。児童は人数が同じであることに着目して,面積が狭い1階がこんでいると答えた。次に,3階の様子を知らせた。教師は「3階とすぐに比べられそうなところはないか」と質問した。児童から面積が同じ2階と比べられることが出された。これらのことから,2階が一番こんでいないことが分かり,児童から「それでは1階と3階ではどちらがこんでいるのか」という疑問が生まれ,本時のめあてとして「3階と1階を比ベて,こんでいる会場を見つける方法を考えよう」で学習を進めた。その後,「一人分の面積」,「1m 2 あたりの人数」や「100m 2 あたりの人数」等で自力解決を図った。
イ 考 察
問題の数値は,計算のミスによって本来の目的を見失わないように簡単にしたことにより,児童にとって抵抗が少なかったと思われる。また,問題の提示を3階分すベてを一度に提示するのではなく,すぐに比ベられるものから考えさせることにより,一方の量をそろえるという考え方を強調することができた。このような手順で進めたことにより,本時のめあてを児童自身で作り出すことができたものと思われる。