研究紀要第117号 「学力向上のための授業改善に関する調査・実践研修 第3年次」 -048/117page
5 研究の実際
(1) 指導計画 (4時間)…………略
(2) 検証授業の実際
検証授業は,福島県立須賀川桐陽高等学校1年5組の音楽選択生徒25名を対象に行った。
1. 第1時
導入として,手拍子アンサンプルによるウォーミングアップを行った。その内容は以下のとおりである。
(a) 左隣の生徒のリズムを模倣していく。(先頭者が途中でリズムを変更した場合,右隣の生徒はそのリズムをなるべく早く模倣し,次の生徒に伝達する。) (b) 全体を5グループに分け,それぞれが違う拍子(2〜5および7拍子)の1拍めで手拍子をする。全員の手拍子があったときに終了。 (c) (a)と同じ要領であるが,先頭者はなるべく特徴のある音を出し,それを模倣していく。 上の(a)と(b)は,リズムの動機(リズムパターン)を組み合わせることによって,おもしろい音楽がたくさんできることを体験できる活動である。また,(c)は,手拍子によって,音色や音の強弱への関心を高めることができる活動である。
ウォーミングアップ終了後に,グループごとに手拍子による小さな音楽(30秒〜1分程度)の創作を行った。その際,音楽を構想するために,「音楽の開始」「持続」「終止」の方法について話し合いながら進めるよう指示した。
作品発表の際には,相互評価として次のような,記入の簡単なカードを配布し,それぞれの班の音楽構造に着目して鑑賞できるよう配慮した。
2. 第2時
ここでは,第3時以降の創作活動の導入として,楽器による即興的表現活動を行った。使用楽器は,個人のものでも学校で用意されているものでもよいことにした。具体的には,以下の内容を行った。
(a) 各自の楽器からさまざまな音を探し,その中で特徴的でおもしろい音を用いて簡単な動機をつくる。 (b) (a)の動機を用い,全員で即興的な音楽をつくる。その際,音を出すタイミングは周囲の音を聴いて,各自判断する。 (c) (a)と同じ要領であるが,制限時間を2分と定め,その中で各自2回だけ演奏する。 (d) 音程のある楽器の生徒たちが5つの音を任意に選ぶ。その順序に従って,一音ずつ同時に演奏する。 上の(a)は,それぞれの楽器の音色の多様さを確かめて,その音色を生かした動機をつくる活動で,(b)と(c)は,(a)をもとに即興的に音楽をつくる活動である。(d)はジョン・ペインターの提案した活動 注3 である。偶然の音を重ねることから,不思議なハーモニーができることを体験する目的であった。
これらの活動を通して,次第に生徒の中に積極的にいろいろな可能性を追求するものが見られるようになった。一方,「これが音楽なのだろうか。」と戸惑う生徒も一部見られた。
3. 第3・4時
(ア) グループに分かれての創作活動
本時は,第2時までの活動をもとに,3つのグループに分かれて創作活動を行った。それぞれの班の活動の様子および完成した作品の特徴は以下のとおりである。
<1班>
ギターと打楽器によるグループ編成。打楽器と一緒に演奏した時に,どうしてもギターの音がかき消されてしまう点が問題となった。その結果完成した
注3 ジョン・ベインター著「音楽をつくる可能性 II 」(坪能由紀子訳,1994年,音楽之友社)のプロジェクト10を参照。