研究紀要第117号 「学力向上のための授業改善に関する調査・実践研修 第3年次」 -049/117page

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作品は,ギター2台による演奏と,打楽器のアンサンプルを交互に行う形になった。

<2班>

マリンバと打楽器による編成。パターンの繰り返しからなる音楽で,最低音のパートの音が変わると同時に,他のパートもパターンを逆行形に変えていた。曲の締めくくりにケンガリが1音だけ鳴らされるのがとても効果的であった。

<3班>

この班は,吹奏楽部に所属する生徒が中心となっている班である。今回の,楽譜を使用しない,日頃練習している「良い音」ではない音の可能性を探る活動への抵抗や戸惑いがあったようで,曲を創るのに苦労していたようであった。作品は,パターンの反復による音楽であり,協和音の響きへの嗜好が見られた。

(イ) 鑑賞活動

第3時終了後に,生徒が考えた音楽構造の特徴を踏まえて,次の要素と鑑賞教材を選んだ。

(a) 音楽に統一感を与える要素
・同じパターンの反復(2,3班)
・ドローン音(2班)
※ 鑑賞教材 「木片の音楽」 (ライヒ)
「雨だれの前奏曲」 (ショパン)
(b) 音楽に多様さを与える要素
・異なる部分の並列による対比(1班)
※ 鑑賞教材「サミュエル・ゴールドべルグとシュムイレ」(ムソルグスキー)

第4時に,それぞれの班の工夫した点等について話し合った後,鑑賞教材を聴き,教師が各班の音楽と既存の作品の間に共通点が見られることを示した。また,音楽構造に着目して鑑賞することも音楽を楽しむための手段になるのではないかと提案し,授業を終えた。

6 考 察

(1) 生徒のアンケート調査から

授業実施後,アンケート調査を行った。その結果は,次のとおりであった。

1. 授業全般の印象について

授業全般の印象について

ほとんどの生徒が「とても楽しかった」「まあまあ楽しかった」と回答している。生徒と担当教師の日常の関係が良いため,肯定的な回答が多かった点もあるとは思われるが,授業の組み立ては生徒の意欲を喚起するものであったと考える。

2. 授業後の鑑賞方法の変化について

授業後の鑑賞方法の変化について

全員が,「大きく変わった」または「少し変わった」と回答している。変わった点として,「リズムパターンに関心を持って聴くようになった」「音楽の構成やアイディアに関心を持って聴くようになった」などの感想が見られた。

(2) 事後調査から

創作活動を実施したクラスと,未実施のクラスそれぞれについて,鑑賞活動における興味・関心の持ち方や鑑賞内容についてアンケート調査を行った。

鑑賞教材は以下の3曲である。

(a) 歌曲集「冬の旅」より「辻音楽師」

(b) バリス・グデ「バンドランガン」

(c) 「我,死者の復活を待ち望む」より第3曲

(a),(b)はともにパターンの反復を基本構造として持つ楽曲である。(c)は現代音楽に属し,各部分ごとの音楽表現の多様さと,2回繰り返されることによる統一感を感じることのできる作品である。それぞれの楽曲を1度ずつ聴いての関心を持てた生徒の割


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