研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -053/117page
1 学習課題は何かを把握する。 2 結果を予想する。 3 課題を解決するための方法や手順を考える。 4 工夫しながら課題解決に取り組む。 5 結果を,今までの体験や学習内容などと関連付けながら,はじめの予想と比較し,検討する。 6 自分で考えて結論を導き,課題を解決する。 7 自分の考えをまとめたり,発表したりする。 8 新たな疑問に気付く。 思考活動が活発に行われたかどうかについては,児童生徒の自己評価(調査2.)で調べた。また,科学的な思考ができたかどうかについては,学習した事象の,事実,相互,因果などの関係がどの程度理解できたかどうかを問うテストの結果から判断した。
3 思考活動を活発にする観察・実験,実習
思考活動を活発にするためには,問題解決的な学習を取り入れた授業を行うことが大切である。問題解決的な学習では,問題の把握,情報の収集や処理などの過程を踏まえる活動の中で思考活動が行われる。理科や技術・家庭では,問題解決的な学習を基本として,多様な目的の観察・実験,実習が行われ,それらに応じた思考活動が行われる。
例えば,問題を把握するときには,既有の知識・理解に基づき予想や仮説を立て,検証のための方法を考える。検証をするときには,目的に応じて器具や方法を工夫して正確な結果を収集する。考察の段階では,結果を処理し,それらを仮説に基づいて解釈したり,原理・法則と関連付けたりするなどの思考活動を行う。また,結果と仮説に矛盾が生じた場合には,新たな仮説を設定し,再度検証を行う過程の中で思考活動が行われる。
観察・実験,実習に基づく一連の活動の中のさまざまな場面で思考活動が行われることにより,既有の知識・理解,技能は,修正や深化が図られ,構造化されていく。このようにして獲得された知識・理解,技能は,問題解決の確かな基礎学力となる。
III 研究の内容
1 思考活動を活発にする観察・実験,実習の工夫・改善について
本研究では,事象理解の各段階において科学的な思考のどの要素が関わっているかに着目し,思考活動を活発にするために,次の1〜6の実践で観察・実験,実習の工夫・改善に取り組んだ。
実践 対象校・教科 思考活動を活発にする観察・実験,実習の工夫・改善 1 小学校理科 日常生活と関わりのある素材を教材化したものづくり活動の導入 2 中学校理科 自作教材を活用した課題選択学習の導入 3 中学校技術・家庭科 操作技能を獲得する過程をスモールステップ化した実習装置の開発と活用 4 高等学校理科物理IB 概念のイメージかを図る観察・実験の工夫 5 高等学校理科地学IB 疑似体験を取り入れた観察・実験の工夫 6 高等学校理科化学IB 結果の予想やまとめの過程を重視したワークシートの工夫 2 検証の方法について
昨年度用いた自己評価票等の内容や評価の方法を再検討し,次に示す児童生徒の自己評価(調査1.〜3.)やテスト成績等(調査4.・5.)により調査した。
調査1. 学習に対する「関心・意欲の程度」 調査2. 「思考活動の程度」 調査3. 思考活動を活発にする観察・実験,実習についての評価(自己評価・文章記述等) 調査4. 学習内容に関する理解の程度(科学的思考の程度)を把握するペーパーテスト 調査5. 事象や知識などの関係付けを表現させた