研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -055/117page
IV 各教科での実践
実践1
小学校理科 2 観察・実験の工夫
1 単元・対象・期間 ○ 単元「電流のはたらき」 ○ 対象 6年 男子13名 女子16名 計29名 ○ 期間平成10年10月〜平成10年12月 (1) 思考活動を活発にする工夫
単元の導入時に児童一人一人が日常生活と関わりのある素材を教材化した「ものづくり」活動を行い,観察・実験を展開すれば,問題意識や解決の意欲が高まり,実験結果をこれまでの体験や学習などと関連付けて考えることができるので,思考活動が活発になると考えた。そこで,児童の生活と関わりの深いスピーカーを「ものづくり」として授業に取り入れた。
(2) 日常生活と関わりのある素材の教材化1. 簡易スピー力ーの開発
○ 磁石にコイルを付け,それに空き缶ややかんなど振動体をのせるだけで簡単に製作できる。
○ コイルをラジカセ等のイヤホン端子に接続すると,音声が流れる。コイルに触ると,振動していることや熱をもっていることを実感できる。
○ マイク端子に接続すると,マイクにもなる。
○ エネルギー変換の見方や考え方を育てることができる発展的な教材である。
2. コイルの発熱をわかりやすくする工夫
電流による発熱を調べる実験では,簡易スピーカーのコイルの部分に変色温度の異なる2種類のサーモテープをはり付ける。このサーモテープの色の変化から,電流による発熱のおおよその温度範囲を視覚的にとらえることができる。
3 授業の実践(1) 単元の導入時に児童一人一人が簡易スピーカー作りを行った。
(2) 手作りのスピーカーをラジカセのイヤホン端子に接続し,音声を流す実験を行った。「どうして音が聞こえるのか」「もっとよく聞こえるようにしたい」という児童の疑問や願いをもとに課題作りを行った。
(3) 手作りのスピーカーから音声が流れているとき,コイルに電流が流れ振動していることを観察した。
これによって,電流が流れると磁力が生じることを学習した。
(4) コイルにはり付けたサーモテープの色の変化を観察し,電流が流れると発熱することを学習した。
(5) 小単元の学習ごとに概念地図作りを行った。児童は,これまでに作成した概念地図を手元におき,小単元で学習したことを修正したり,発展させたりした。
4 結果と考察(1) 「ものづくり」活動から始める観察・実験に対する児童の評価
調査3.は,簡易スピーカー作りから始める観察・実験に対する児童の評価の結果である。各項目に示した数値は,5段階評価で5,4,3を選んだ児童の全児童に対する割合である。どの項目も,ほぼ80%以上と高い値である。