研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -056/117page
調査3. ものづくり活動から始める観察・実験に対する児童の評価 5:とてもよくあてはまる
4:あてはまる
3:少しあてはまる
2:あまりあてはまらない
1:全くあてはまらない簡易スピーカー作りから始める観察・実験を行うことで 1 「なぜ,どうして」と思うことがあった。 97%
2 自分から進んで考えた。 79%
3 自分から進んで調ベた。 90%
4 課題を解決する方法を自分 なりにすじ道を立てて考えた。 79%
5 結果を,予想や体験,今までの学習内容と関連付けて考えた。 79%
6 深く考えるようになった。 86%次は,事後の児童の感想である。
○ 電流のはたらきについて初めて学習したときにスピーカーを作って聞くと,音がはっきり聞こえ,おもしろく何でこんなふうになるのかなと思った。 ○ 磁石にコイルをのせただけで音が出たのでびっくりした。これからも新しい発見をたくさんしたい。 これらのことから,簡易スピーカー作りから始める観察・実験により,問題意識や解決の意欲が高まっているのがわかる。
(2) 「思考活動の程度」の変容
図3は,事前,事後に行った「思考活動の程度」(調査2.)の結果を項目ごとに学級平均で表したものである。
事前と事後の調査結果をみると,項目5「実験結果を予想や体験,今までの学習内容などと関連付けている」は,他の項目と比ベて大きく伸びている。また,授業の中で「モーターの中には磁石とコイルがあるので,これもスピーカーになるのではないか」と考えてラジオにつなぐなど,教師も予想していなかった活動をする児童もみられた。これは,既習の学習事項をもとに原理・法則を適用したり,筋道を立てて推論したりするなど思考活動を活発に行った結果と考えられる。
これらのことや調査3.の結果は,単元の導入時に児童一人一人が作ったスピーカーが日常生活と関わりが深く,簡単な仕組みでできているので,それを用いた実験では,問題意識が高まり,進んで体験や既習の学習事項と結びつけようとしたためと考えられる。
(3) 児童がかいた事後の概念地図
図4はある児童が事後にかいた概念地図である。児童は,電流によって磁力や熱が発生することを理解し,磁力や熱を電流の強さと関係付けて捉えている。それぞれの概念の関係付けができており,確かな知識が獲得されていると考えることができる。
(4) 事後テスト成績の結果
事後テスト(調査4.)の学級平均正答率は,84%とかなり高かった。これは,簡易スピーカーを用いた実験によって,電流が磁力や熱に変わることを容易に実感でき,電流のはたらきを磁力や熱と関係付けることができたためと考えられる。
5 成果
○ 単元の導入時に日常生活と関わりのある素材を教材化した「ものづくり」活動を行い,観察・実験を展開することで,問題意識が高まり,実験結果を今までの体験や学習内容などと関連付けて考えるようになるなど思考活動が活発になった。
○ 電流が磁力や熱に変わることを実感できる実験を行うことは,電流のはたらきについての確かな知識・理解の獲得につながった。