研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -057/117page
実践2
中学校理科
1単元・対象・期間 ○ 単元第1分野身のまわりの科学「音の世界」 ○ 対象1年男子21名女子15名計36名 ○ 期間平成10年9月〜平成10年10月
2 観察・実験の工夫(1)思考活動を活発にする工夫
これまでの授業では,学習課題や課題解決のための実験方法などが救師から示される一斉学習が多く,多様な生徒の課題意識や解決意欲を十分に満たすことができなかった。
そのため,生徒指導の機能を生かし,生徒自身に課題を選択させ,実験計画を立てて学習を進めさせれば,生徒の課題解決意欲を高め,思考活動を活発にできると考えた。
そこで,学習がどの項目からでも展開できる音の単元で,学習内容をいくつかの課題に分け,生徒自身が授業時間ごとに課題を選択する課題選択学習を取り入れた。
また,音についての理解の程度が異なる多様な生徒に応えるため,自作教材を含む観察・実験を選び,課題ごとに「実験群」を準備した。自作教材は,操作が手軽で直観的に理解できる簡便なものを製作した。
(2) 開発した教材
1. 簡易真空鈴装置
○ 音は真空中を伝わらないことを実験する装置である。
○ 材料として,家庭用の真空密閉保存容器や電子プザー,モーターを用いた。
○ 容器内の空気をぬくと,ゴム片が動かなくなり,ブザーの音も聞こえなくなることから,真空中では音は伝わらないことが理解できる。
2. ポイススコープ
○ 音を水面の振動に変えて観察する装置である。
○ 材料として,カップみそ汁の容器と水道ホース,べットボトルを用いた。
○ ふたに少量の水をたらし洗剤を数滴加えて声を出すと,水面が振動する。自分で声を出し,音の大きさや高さを変えると,それに伴って振動が変化することを,目で見て実感することができる。
3 授業の実践(1) 課題の設定と選択
1. ストロー笛やコップで音を出すなどの簡単な生徒実験を行って,音は物体の振動で生ずることを確認した。
2. 実験で気付いたことや疑問点について討議した後,これから調べてみたいことを発表し合い,それらの意見を集約して,生徒自ら次の課題A〜Cを設定した。
課題A 物によって音の出方や伝わり方は違うのだろうか。 課題B 音の大きさや高さを変えると,振動の様子はどう違うのだろうか。 課題C 音の速さはおおよそどれくらいか。 3. 生徒自身が,3時間の授業で取り組みたい課題をA〜Cの中から選んで,その課題の学習する順序を決めた。
(2) 課題を解決するための実験の選択
課題を解決するための実験を次の「実験群」の中から選択して,3時間の学習計画を立てた。
<課題Aの「実験群」> A−1 音の伝わり方(音叉を水面につける) A−2 空気中を伝わる音(音叉の共鳴) A−3 物体を伝わる音(糸電話・パネ電話) A−4 水中のプザー