研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -059/117page
(2) 課題選択学習と知識・理解との関係
音についての理解の程度を調べる事後テストは,73%の正答率となった。この結果から,音についての理解が深まっていることがわかった。テストの正答率を,事象理解の段階ごとに事前と事後で比較してみると 図3 のようになった。
これによると、「因果関係の理解」の変容が特に大きい。このことは,ポイススコープやオシロスコープを活用した観察・実験によって,音が変化すると振動が変化することや、音の大きさ・高さが変化すると振幅・波長が変化することを観察し、音の変化を振動の変化と関連付けて考えることができたためと思われる。
次は,その「因果関係の理解」の程度を調ベたテスト問題の一部である。
図4 は,課題選択学習がどの程度理解に役立ったかを,生徒の評価で調査した結果である。
図4 課題選択学習に対する生徒の評価
調査3.−3「音の理解に役立った」
この結果から,90%以上の生徒が,課題や実験を選択して学習したり実験群のいろいろな観察・実験を行ったりしたことは,音の理解に役立ったと評価している。
また,図5のように,課題選択学習に対する生徒の評価と事後テストの正答率との間には,かなりの相関(相関係数0.64)がみられた。
図5 課題選択学習に対する生徒の評価と事後テスト正答率との関係
これらのことから,課題選択学習は,知識・理解の獲得に有効であることがわかった。
これは,自分の興味・関心や理解の程度にあった課題や実験を自ら選択したことで,観察・実験により積極的に取り組み,課題が解決できたためと思われる。
5 成 果
自ら課題を選択し,課題を解決するための実験を「実験群」の中から選択する学習は,課題解決意欲を高め,思考活動を活発にし,確かな知識・理解の獲得に有効であった。