研究紀要第118号 「基礎学力向上のための授業改善に関する実践的研究」 -067/117page
実践6
高等学校 理科 化学IB
1 題材・対象・期間 ○ 単元「コロイド溶液」 ○ 対象 2年男子14名 女子14名 計28名 ○ 期間 平成10年9月〜平成10年12月 2 観察・実験の工夫
(1) 思考活動を活発にする工夫
化学の学習では,事象を物質の粒子性と関連付けて理解することが大切である。しかし,観察・実験において,このような視点で事象を理解することが苦手な生徒が少なくない。そこで,生徒が観察・実験の過程で,事象を物質の粒子性と関連付けて考えることができるようにワークシートの形式や活用の仕方を工夫すれば,思考活動は活発になると考えた。
(2) ワークシートの形式と活用の工夫
ワークシートは,予想,結果,考察など段階ごとに区分し,生徒が溶液中の粒子の大きさや性質について自ら考えてまとめることができる形式とした。
図1 は,コロイド粒子の大きさを,ろ紙やセロハン膜の透過と関連付けて調べる観察・実験で用いたワークシートである。結果を予想する段階で,粒子が半透膜を透過したかどうかを,これまでに学んだ粒子の検出方法と関連付けて考えながら予想を立て,課題解決ができるようにした。
教師は,予想や結果などの各段階で,生徒が記入したワークシートの内容について,その都度,形成的な評価をしてきめ細かなフィードバックを行い,段階を踏んで進むことができるようにした。
3 授業の実践
(1) 生徒は,観察・実験において,結果の予想,結果の把握などの段階ごとに,自分で考えワークシートに記入した。
なお,教師と実習助手は,机間をまわり,ワークシートの記入状況や内容を確認した。
自分の考えをまとめることが苦手な生徒は,教師からの助言やヒントをもとに,学習を進めた。
(2) 観察・実験後,ワークシートの記述をもとにマップ形式のまとめ(図2)に取り組み,観察・実験でわかったことを整理した。
4 結果と考察
(1) ワークシートの形式と活用に対する生徒の評価
生徒は,ワークシートの形式と活用について,次のような感想を述ベている。
○ 1つ1つゆっくりと確認していくので,わからないところがだんだんわかるようになっていくし覚えやすい。 ○ 自分で予想を立てることで,前の実験や今までの学習内容と関適性がつかみやすい。 ○ デンプンやイオンの大きさを,ろ紙やセロハン勝を通るか通らないかで比ベることができることに驚いた。 また,事後に,調査3.「ワークシートの形式と活用に対する生徒の評価」について調査した。各項目に示した数値は,4段階評価で4,3を選んだ生徒の割合である。