研究紀要第119号 「情報ネットワークの教育活用に関する研究」 -086/117page
II 研究の概要
1 データの変更・追加を可能にするシステムの開発
文字や写真等の提示内容を簡単に変更したり,新たに追加したりすることを可能にするシステムを開発する。この際,プログラミング言語を用いることにより,他のアプリケーションソフトに依存しないで手軽に活用できるよう配慮する。このことにより活用までの準備を簡単にし,さらに児童生徒の実態に応じて教師が提示したい内容を柔軟に組み替えたり,児童生徒が学習活動の成果をコンピュータの活用を通してまとめ,表現できるようにするなど幅広いコンピュータの活用が期待できる。
2 理科におけるデータ変更・追加型教材の開発
理科教育においては,社会の変化に柔軟に対応できる主体的な探求活動や体験的な学習活動の充実,観察・実験の一層の充実を図ることが課題である。そこで,観察や実験など児童生徒の直接体験をコンピュータで代替するのではなく,あくまでも直接体験への関心・意欲を高め,児童生徒自らの活動を支援する立場に立って,前述のシステムを取り入れた教材の開発を行う。
III 研究計画
4月 ○ 教育用ソフトウェア開発構想立案 5月 ○ 研究主題,開発するソフトウェアの内容等の立案と検討 ○ 資料の収集と文献研究 ○ 開発用言語の検討 6月 ○ 研究計画書の作成 7月 ○ 開発用言語の活用研究 ○ 基本設計書の作成 8月 ○ プログラミング開始 ○ データ管理システムの開発 10月 ○ 理科教材の基本構成作成 ○ 研究の中間まとめ 11月 ○ 理科教材のプログラミング開始 1月 ○ 理科教材試作版完成 2月 ○ 開発教材細部の改善 ○ 研究のまとめ ○ 開発教材の活用研究 3月 ○ 開発教材の提供版作成 ○ ソフトウェアライブラリへの登録 IV 研究の実際
1 データの変更・追加を可能にするシステムの開発
(1) 基本設計
本主題に迫るために,以下の視点からシステムの基本設計を行った。
1. 手軽に活用できるための配慮から昨年度まで開発したソフトウェアの活用状況を分析すると,広く活用されるために必要な条件としてソフトウェアの内容が優れていること以外に,大きく次の点があげられた。
○ 活用までの準備が簡単である。 ○ 操作が簡単である。 ○ 活用範囲が広い。(対象学年に幅がある。) ○ 開発ソフトが独立して使える。 (他のアプリケーション等のソフトウェアに依存しない。) ○ 提示内容を柔軟に変更できる。 特に,提示したい内容を簡単に変更・追加できる点は,児童生徒の実態に応じた柔軟な支援を行う上から大切なポイントとなる。また,実際の授業での活用を考えると,指導者自身の指導方針等により重点の置き方にも差異があり,教師が適時内容を組替えたり変更したりできる等の機能を持たない教材では,活用の範囲が大きく限定されてしまい,結果として実態に合わない,あるいは使いにくい等の理由から活用されないでしまうことが多い。
2. 目指すコンピュータ活用のあり方から
学習活動におけるコンピュータ活用を考えると次の2つに大別できる。
1つは,チュートリアル型やドリル型を中心とした,主に学習の定着を図ることを目的とする使い方である。児童生徒が学習内容を完全に習得するためには有効で必要なものであるが,コンピュータに制御されながら,前もって決められたコースをたどって学習していくものが多い。