研究紀要第119号 「情報ネットワークの教育活用に関する研究」 -087/117page
もう1つは,自分の問題や課題を解決したり,法則性を発見したり,イメージや想像をふくらませたりあるいは表現したりするために,児童生徒が自らコンピュータ(通信ネットワークを含む)を道具として活用していくものである。
本システムの開発は,特に後者の活用に目を向け,児童生徒が自ら調ベたり,まとめたりした内容を蓄積できる機能を付加して,道具としての活用の幅を広げようとするものである。
(2) 開発内容・方法
1. 開発内容
文字や写真等のデータをできるだけ簡単に変更したり追加できるよう工夫した。具体的には,文字入力においては入力までの準備を自動化し,写真などのデータはマウスのダブルクリックによって画像ファイルの選択までを自動化した。また,実際に表示されるレイアウトを意識して内容の変更や追加ができるよう構成した。
2. 開発方法
ア 開発用言語
開発用言語を以下の条件をもとに選定し,Visual Basicを用いることにした。
○ Windows環境に対応している。 ○ 言語理解が比較的容易である。 ○ 写真,動画,音声が使える。 ○ 開発ソフトが独立して使える。 特に重視したことは,動画や音声等を再生するためにWindows98/95等のOSに標準でついているものが利用できたり,データを記録するためMicro‐soft Accessのデータテープルを用いることにしたが,これらが互いにOSを介して他のアプリケーションソフトに依存しないで使えたりする点である。
イ 開発までの準備
システムの開発と併せて本システムを取り入れた教材を開発するため,以下の点から研究を行った。
○ 教材構成要素の分析 (提示,入力,条件・判断,分岐・処理等) ○ 教材構成要素のプログラム化 ○ 開発教材の配布方法 2 理科におけるデータ変更・追加型教材の開発
(1) 基本設計
1. 教材開発単元
中学校理科第2分野「植物の世界」
2. 単元のねらいから
身のまわりの植物の生活について,小学校では,直接的な観察や栽培を通して学習してきている。中学校ではさらに小学校の学習を発展させ,植物の仲間の増やし方や体のしくみ,仲間分けについて学ぶ。この学習を通して,生物の生活や特徴の調ベ方の基礎,生物に対する科学的な見方・考え方を養うことがねらいである。
植物観察は,本単元の学習への動機付けを図り,様々な植物の生き方や自然現象を関連付けて考察する等の探求活動を支える重要な役割を担っている。
3. 教材開発の意図
マルチメディア教材が発展すればするほど直接体験をより重要視していかなけれぱならない。とりわけ理科においては,画面を見ることによって「調ベてみたい」「もっと詳しく知りたい」という知的好奇心をかき立て,生徒の直接体験への関心・意欲を高めていく教材が求められている。
さて,これまでのマルチメディア教材をみると,例えば検索・提示型教材では,データとして収録されている内容しか見れなかったり,あるいは情報を提示するだけに終わってしまうものが多く見られる。また,ドリル型教材においても問題が固定しており,変更できないものが多い。このように,学習者にとっては画面から提示される情報を目的に応じて選択し,活用する構成のものが多いが,生徒が直接体験によって得たデータを扱えるようにはなって